一 兇器準備集合罪は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものである。 二 兇器準備集合罪はいわゆる抽象的危険反であつて、いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪が成立するためには、必ずしも相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要でなく、兇器準備集合の状況が社会生活の平穏を害しうる態様のものであれば足りる。
一 兇器準備集合罪の保護法益 二 迎撃形態の兇器準備集合罪と相手方からの襲撃の客観的蓋然性の要否
刑法208条ノ2
判旨
凶器準備集合罪(刑法208条の2)は、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とする抽象的危険犯である。迎撃形態の場合、相手方の襲撃の蓋然性や切迫性が客観的に存在することは不要だが、集合状況が社会生活の平穏を害しうる態様であることを要する。
問題の所在(論点)
迎撃形態の凶器準備集合罪において、相手方からの襲撃の具体的蓋然性・切迫性が客観的に存在することが、構成要件(共同加害の目的または抽象的危険)として必要か。
規範
本罪は、個人の生命・身体・財産のほか、公共的な社会生活の平穏を保護法益とする「抽象的危険犯」である。したがって、いわゆる迎撃形態であっても、相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要ではない。もっとも、本罪が成立するためには、凶器準備集合の状況が社会生活の平穏を害しうる態様のものであることを要する。
重要事実
被告人らは、対立する他派(A派)からの襲撃に備え、自派(B派)の拠点を防衛する目的で、多人数で凶器を準備して集合した。被告人側は、迎撃形態(防衛目的)である以上、相手方による襲撃の具体的・客観的な可能性が存在しなければ共同加害の目的が認められず、本罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
本罪の保護法益には公共的平穏が含まれるため、実際に襲撃が発生するか否かの客観的状況よりも、集合行為自体の態様が重視される。被告人らは凶器を準備し、多人数で防衛態勢を敷いて集合しており、このような状況自体が社会生活の平穏を害しうる態様といえる。共同加害の目的は主観的意図であり、相手方の襲撃を認識・予期して迎撃する意思があれば足りる。襲撃の具体的可能性は、かかる主観的意図を推認するための資料や、抽象的危険の有無を判断する一要素にはなり得るが、それ自体が独立した客観的成立要件ではない。
結論
迎撃形態であっても、社会生活の平穏を害しうる態様で集合した以上、相手方の襲撃の客観的蓋然性がなくとも凶器準備集合罪が成立する。
実務上の射程
迎撃(防衛)目的であっても「共同加害の目的」は否定されないという実務上の準則を示す。答案上では、具体的危険犯説を排しつつ、補足意見が示すように「凶器の種類、数量、人数、周囲の状況」から「公共的平穏に対する抽象的危険」を実質的に認定する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和47(あ)160 / 裁判年月日: 昭和48年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反(共同暴行等)の罪数関係につき、前者は公共的平穏も保護法益とするため、後者の単なる手段とは評価できず、牽連犯ではなく併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人らは、他人に加害する目的で凶器を準備して集合し(凶器準備集合)、その後、実際に特定の被害者に対して暴行等の…
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。
事件番号: 昭和55(あ)372 / 裁判年月日: 昭和57年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】凶器準備集合罪(刑法208条の2)は、個人の生命、身体、財産のほか公共的な社会生活の平穏をも保護法益とし、「集合」の状態が継続する限り、同罪は継続して成立する(継続犯)。 第1 事案の概要:被告人らが、他者に対して危害を加える目的で凶器を準備して集合した。当該集合状態は、体育館内等の特定の場所にと…