一、長さ一メートル前後の角棒は、刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたる。 二、すでに一定の場所に集まつている二人以上の者が、その場で兇器を準備し、またはその準備のあることを知つたうえ、他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的を有するに至つた場合は、刑法二〇八条の二にいう「集合」にあたる。 三、刑法二〇八条の二にいう「集合」の状態が継続するかぎり、兇器準備集合罪は、継続して成立する。
一、長さ一メートル前後の角棒は刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたるか 二、刑法二〇八条の二にいう「集合」にあたる場合 三、刑法二〇八条の二にいう「集合」の状態の継続と兇器準備集合罪の継続
刑法208条の2
判旨
刑法208条の2の「兇器」には、用法により殺傷能力を有し社会通念上危険を感じさせる物(角棒等)も含まれる。また「集合」とは、共同害加目的をもって一定の場所に集まる行為のみならず、既集合者がその場で目的を有し兇器を準備した場合も含む継続犯である。
問題の所在(論点)
1. 本来は殺傷用ではない「角棒」が、刑法208条の2の「兇器」に該当するか。2. すでに集まっている者がその場で加害目的を有し兇器を準備した場合も「集合」に該当するか。3. 兇器準備集合罪は継続犯か、それとも即成犯か。
規範
1.「兇器」とは、本来の性質上殺傷用に作られたものに限らず、用法によっては人の生命、身体、財産に害を加えるに足りる器物であり、かつ加害目的で準備・集合した際に社会通念上危険を感じさせるものをいう。2.「集合」とは、共同して害を加える目的で兇器を準備・知情して集まる行為のほか、既に集まっている者がその場で目的を有し、又は兇器の準備を知った場合も含む。3.本罪は公共的な社会生活の平穏を保護法益とする継続犯である。
重要事実
被告人らは、長さ1メートル前後の角棒を準備した。被告人らは二人以上の集団として一定の場所に集まっており、他人の生命、身体、財産に対して共同して害を加える目的を有していた。弁護側は、角棒が「兇器」に当たらないことや、既に集まっている状態からの目的形成は「集合」に当たらないこと、また本規定が憲法31条、21条に違反することを主張して上告した。
事件番号: 昭和45(あ)1011 / 裁判年月日: 昭和47年3月14日 / 結論: 棄却
他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに準備されたダンプカーであっても、他人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りない場合には、刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたらない。
あてはめ
1. 本件の角棒は、本来の性質は殺傷用ではないが、長さ1メートル前後あり、用法によっては殺傷能力を有する。これを加害目的で準備して集合する行為は、社会通念上、他人に危険感を抱かせるに足りるため「兇器」にあたる。2. 集合の概念について、当初から目的を持って集まる場合に限定せず、集まった後に目的が生じた場合も含めなければ、社会の平穏を保護するという法益を達し得ない。3. 公共の平穏を保護法益とする以上、集合状態が続く限り、罪も継続すると解するのが相当である。
結論
被告人らの行為は兇器準備集合罪を構成する。角棒は兇器に該当し、既集合後の目的形成も「集合」に含まれるため、原判決に憲法違反や法令誤認はない。上告棄却。
実務上の射程
兇器の定義について「性質上の兇器」だけでなく「用法上の兇器」を認めた重要判例。また、集合概念を動的に捉え、事後的な目的形成や継続犯としての性質を明示した。答案上では、鉄パイプや木刀などの検討、および共同正犯や罪数(集合状態の継続)の議論において、本判例の規範を直接引用できる。
事件番号: 昭和55(あ)1608 / 裁判年月日: 昭和58年6月23日 / 結論: 棄却
一 兇器準備集合罪は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものである。 二 兇器準備集合罪はいわゆる抽象的危険反であつて、いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪が成立するためには、必ずしも相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要でなく、兇器準備集…
事件番号: 昭和50(あ)1596 / 裁判年月日: 昭和50年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2(凶器準備集合罪・結集罪)にいう「凶器」の意義について、その規定内容が不明確であるとはいえず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aら4名は、凶器準備集合罪等の罪状で起訴された。第一審および控訴審において有罪判決を受けたため、被告人らは最高裁判所に対し、同条に規定され…
事件番号: 昭和55(あ)372 / 裁判年月日: 昭和57年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】凶器準備集合罪(刑法208条の2)は、個人の生命、身体、財産のほか公共的な社会生活の平穏をも保護法益とし、「集合」の状態が継続する限り、同罪は継続して成立する(継続犯)。 第1 事案の概要:被告人らが、他者に対して危害を加える目的で凶器を準備して集合した。当該集合状態は、体育館内等の特定の場所にと…