他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに準備されたダンプカーであっても、他人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りない場合には、刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたらない。
刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたらないとされた事例
刑法208条ノ2
判旨
刑法208条の2第1項(現208条の3)にいう「兇器」とは、人を殺傷する用具として利用される外観を呈し、社会通念上、他人をして危険感を抱かせるに足りるものを指す。主観的に殺傷の意図があったとしても、客観的な外観から直ちに危険性が認められない日常的な用具(ダンプカー等)は「兇器」に当たらない。
問題の所在(論点)
刑法208条の2(現208条の3)の兇器準備集合罪における「兇器」の意義、特に本来は人を殺傷するための用具ではない自動車(ダンプカー)が、殺傷の意図をもって準備された場合に「兇器」に含まれるか。
規範
「兇器」とは、性質上の凶器(銃砲刀剣類等)に限らず、本来は他人の生命身体に危害を加える目的で作られたものではない日常的な用具であっても、それが人を殺傷する用具として利用される外観を呈し、社会通念に照らし、他人をして危険感を抱かせるに足りる形態、用法等を有しているものをいう。
重要事実
被告人らは、対立する団体との抗争において他人を殺傷する用具として利用する意図の下に、ダンプカーを準備して集合した。なお、現場には当該ダンプカーの他に、けん銃や日本刀などの兇器も準備されていた。原審は、殺傷の意図をもって準備された以上、ダンプカーも「兇器」に当たると判断した。
あてはめ
本件ダンプカーは、被告人らに他人を殺傷する主観的な利用意図があったとしても、客観的な性質や形状において、直ちに人を殺傷する用具としての外観を呈していたとは認められない。したがって、社会通念に照らして他人をして危険感を抱かせるに足りるものとはいえない。ゆえに、客観的側面を欠く本件ダンプカーは「兇器」に当たらない。
結論
本件ダンプカーは「兇器」に当たらない。もっとも、被告人らはダンプカー以外にけん銃や日本刀などの兇器が準備されていることを知って集合しているため、結論として兇器準備集合罪の成立は免れない。
実務上の射程
用法上の凶器の判断において、主観的な殺傷意図(主観説)だけでなく、客観的な危険性・外観(客観説)を重視する。自動車や工具などの日常的な物を「兇器」として認定する際には、それが武器として転用されることが客観的に明白な状況にあるか否かを慎重に検討する必要がある。
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。
事件番号: 昭和47(あ)159 / 裁判年月日: 昭和48年2月8日 / 結論: 棄却
被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携…
事件番号: 昭和50(あ)1596 / 裁判年月日: 昭和50年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2(凶器準備集合罪・結集罪)にいう「凶器」の意義について、その規定内容が不明確であるとはいえず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aら4名は、凶器準備集合罪等の罪状で起訴された。第一審および控訴審において有罪判決を受けたため、被告人らは最高裁判所に対し、同条に規定され…