いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪において共同加害目的があるというためには、行為者が、相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性を認識している必要はなく、相手方からの襲撃のありうることを予想し、襲撃があつた際にはこれを迎撃して相手方の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える意思を有していれば足りる。
迎撃形態の兇器準備集合罪における共同加害目的
刑法208条ノ2
判旨
いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪における共同加害目的は、襲撃の蓋然性や切迫性の認識を要さず、襲撃を予想し、その際に迎撃して害を加える意思があれば足りる。
問題の所在(論点)
兇器準備集合罪(刑法208条の2)における「共同して害を加える目的」の意義、特に対立組織等の攻撃に備える「迎撃形態」において、相手方からの襲撃の蓋然性や切迫性の認識が同目的の成立に必要か。
規範
刑法208条の2第1項前段にいう「共同して害を加える目的」とは、いわゆる迎撃形態の事案においては、行為者が相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性を認識している必要はない。相手方からの襲撃のありうることを予想し、襲撃があった際にはこれに迎撃して相手方の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える意思を有していれば、同目的が認められる。
重要事実
本件は、いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪が問われた事案である。被告人らは、対立する組織等からの襲撃に備えて兇器を準備し集合したが、具体的にいつ、どのような形で襲撃が行われるかという蓋然性や切迫性についてまで認識していたか、あるいはその認識が本罪の成立に不可欠かが争点となった。
あてはめ
迎撃形態であっても、あらかじめ兇器を準備して集合する行為は、それ自体が他者の生命・身体等に対する危険を孕むものである。したがって、いつ襲撃が起こるかという具体的な蓋然性や、直ちに襲撃がなされるという切迫性を認識していなくとも、襲撃を「予想」し、それに対して「共同して反撃・加害する意思」があれば、法が禁止する共同加害目的の危険性は認められる。本件被告人らにおいて、襲撃の可能性を予想した上での迎撃意思が認められる以上、蓋然性・切迫性の認識を欠いていても同目的の存在は肯定される。
結論
迎撃形態の兇器準備集合罪において、共同加害目的があるというためには、襲撃の蓋然性・切迫性の認識は不要であり、襲撃を予想し迎撃する意思があれば足りる。
実務上の射程
迎撃事案における「共同加害目的」の主観的要件を緩やかに解釈した重要な判断である。答案上では、被告人側が「正当防衛的意図」や「具体的な危険の欠如」を主張する場面において、本判例を引用し、襲撃の具体的予想と加害意思さえあれば同目的が充足されることを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和38(あ)364 / 裁判年月日: 昭和38年7月12日 / 結論: 棄却
原判決が「相手が襲撃して来た際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的を以て兇器を準備して身内の者とともに集合した」被告人の本件所為を兇器準備集合罪に当るとしたのは正当である。被告人の所為が積極的にいわゆる殴り込みをかけようとしたのではなく相手の襲撃を防ぐためであつたとしても、これを迎撃して相手を殺傷する目的があつ…
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。
事件番号: 昭和51(あ)671 / 裁判年月日: 昭和52年7月21日 / 結論: 棄却
刑法三六条における侵害の急迫性は、当然又はほとんど確実に侵害が予期されただけで失われるものではないが、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは失われることになる。