一 刑訴法第二五五条にいう「犯人が国外にいる場合」とは、検察官において公訴を提起し得る程度に犯人および犯罪事実を覚知していることを要件とするものではなく、単に犯人が国外にいるという事実があれば足りるとした原判決の判断は正当である―昭和三五年(あ)第七三五号、同三七年九月一八日最高裁判所第三小法廷判決、刑集一六巻九号一三八六頁参照。 二 所論は憲法第二二条第二項、第三一条違反につきるる主張をするが、本件に適用された出入国管理令第六〇条第二項、第七一条および旅券法第一三条第一項、第一四条、第一九条第一項第四号の規定が憲法の右条項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和三四年(あ)第一六七八号、同三七年一一月二八日判決、刑集一六巻一一号一六三三頁、昭和二九年(オ)第八九八号、同三三年九月一〇日判決、民集一二巻一三号一九六九頁)の趣旨とするところであり、いまこれを変更する必要を認めない。
一 刑訴法第二五五条にいう「犯人が国外にいる場合」の意義。 二 出入国管理令第六〇条第二項第七一条および旅券法第一三条第一項第一四条第一九条第一項第四号の合憲性。
刑訴法255条,憲法22条2項,憲法31条,出入国管理令60条2項,出入国管理令71条,旅券法13条1項,旅券法14条,旅券法19条1項4号
判旨
刑事訴訟法255条1項の「犯人が国外にいる間」による公訴時効の停止は、検察官が犯人または犯罪事実を覚知していることを要件とせず、単に犯人が国外にいるという客観的事実があれば足りる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法255条1項による公訴時効の停止要件として、検察官が「犯人および犯罪事実を覚知していること」が必要か、それとも「国外にいるという事実」のみで足りるか。
規範
刑事訴訟法255条1項にいう「犯人が国外にいる場合」とは、検察官において公訴を提起し得る程度に犯人および犯罪事実を覚知していることを要件とするものではなく、単に犯人が国外にいるという客観的な事実があれば足りる。
重要事実
被告人は出入国管理令(当時)及び旅券法違反の罪に問われていたが、犯行後、犯人が国外に滞在していた期間があった。検察側がこの国外滞在期間中に公訴時効が停止していたと主張したのに対し、弁護側は、検察官が犯人や犯罪事実を認識していなければ時効停止の効力は生じないと争った。
あてはめ
刑事訴訟法255条1項の趣旨は、犯人が国外にいる間は実質的に公訴権の行使が困難であるという客観的事態を考慮したものである。したがって、検察官が具体的に犯人を特定し、あるいは犯罪事実を把握して公訴提起が可能な状態にあることを要件とする必要はない。本件においても、被告人が国外にいたという事実が存する以上、同条項により時効は停止するものと解される。
結論
被告人が国外にいた事実は、検察官の覚知の有無にかかわらず刑事訴訟法255条1項の「国外にいる場合」に該当し、公訴時効は停止する。
実務上の射程
公訴時効の停止に関する基本判例である。犯人の主観的意図(逃亡目的等)や検察官の覚知を問わない「客観説」を維持しており、答案上も同条の文言通り、国外滞在の事実のみを指摘すれば足りる。
事件番号: 昭和35(あ)2203 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の性質上、日時、場所、方法を詳らかにできない特殊事情がある場合には、公訴事実の特定を目的とする刑事訴訟法256条3項の趣旨を害しない限りの幅のある表示も許容される。本件密出国の事案では、詳細な特定が困難であり、起訴状や公判での陳述から審判対象が明確であれば、被告人の防御に実質的障害を与えず、公…