原審において、弁護人から弁償に関し、理由を具し書証を添付して弁論再開の請求があつたにかかわらず、原審としては今更証拠の取調のため弁論を再開する必要はないものと認め、何等の決定もせず再開を許さないまま判決を宣告したものであると解される場合には、原審の右措置は正当であつて、原審が再開を許さないで判決するについては、判決宣告に先立ち、再開請求を却下する旨の決定を形式的にしなかつた点違法であるというべきであるが、それは形式だけの違法であつて、実質的には却下の決定がなされたものということができ、右形式だけの違法は原判決に影響を及ぼさないことが明らかである(昭和三五年(あ)第二一九四号同三六年五月二六日第二小法廷判決、刑集一五巻五号八四二頁参照)。
弁論再開請求に対し何等の決定をしないで判決を宣告した手続の瑕疵と判決への影響。
刑訴法313条,刑訴規則214条
判旨
弁論再開請求に対し、裁判所が決定をせず判決を宣告したとしても、実質的に却下決定がなされたものと認められる場合には、判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
弁論再開請求に対し、裁判所が形式的な却下決定を経ずに判決を宣告した場合の訴訟手続の違法性と、それが判決に影響を及ぼすか(刑訴法379条、410条1項関連)。
規範
弁論再開の請求に対し、裁判所が必要がないと認めて再開を許さないまま判決を宣告した場合、形式的に却下決定を欠いていたとしても、実質的には却下決定がなされたものと解する。したがって、かかる手続上の不備は、特段の事情がない限り判決に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人の弁護人が原審において弁論再開の請求を行ったが、記録上、原審がこれに対して何らかの決定をした形跡が存しなかった。原審は、証拠調べのために弁論を再開する必要はないと判断し、再開を許さないまま判決を宣告した。
事件番号: 昭和35(あ)2194 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
当事者から終結した弁論の再開請求がなされたときは、裁判所は、その請求を容れて再開するか、又はその必要なしと認めて却下するか、いずれかの決定を与えなければならないものと解するを相当する。
あてはめ
本件では、原審が弁論再開の必要がないと判断して判決を宣告している。この措置は実質的に再開請求を却下したものといえる。したがって、宣告前に形式的な却下決定をしなかった点は形式上の違法にとどまり、実質的には決定がなされたのと同視できるため、判決への影響は認められない。
結論
原判決に影響を及ぼすべき違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮、特に弁論終結後の申立てに対する処理の適法性が問われる場面で活用できる。形式的な手続瑕疵が実質的な判断によって治癒される(判決に影響を及ぼさない)という法理を示す一例である。
事件番号: 昭和28(あ)713 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が適法に証拠調べを経た証拠に基づいて犯罪事実を認定している以上、これを確認した原判決に判例違反等の上告理由は認められない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、第一審判決の証拠調べおよび事実認定に誤りがあり、それを是認した原判決には判例違反があるとして上告した。しかし、第一審公判調書…
事件番号: 昭和28(あ)1641 / 裁判年月日: 昭和29年10月13日 / 結論: 棄却
第一審第一九回公判調書によれば、所論の前記証拠決定は第一審裁判所が同公判においてさきに為した所論証人を公判において取調ぶべき旨の証拠決定を変更したものと解せられるところ、同決定を為すについては、検査官が右証人の申請理由を述べ、その尋問を求めたのに対し、被告人両名及びその弁護人はこれに同意したことが右公判調書によつて明ら…
事件番号: 昭和28(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する勾留の不法は、それ自体が原判決自体の違法を構成するものではなく、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反および判例違反等を理由に上告した事案。上告趣意において、事実誤認や証拠取捨選択の不当を主張するとともに、被告人は勾留の不法を訴え、これを理由として…