当事者から終結した弁論の再開請求がなされたときは、裁判所は、その請求を容れて再開するか、又はその必要なしと認めて却下するか、いずれかの決定を与えなければならないものと解するを相当する。
当事者の弁論再開の請求とこれに対する決定の要否。
刑訴法313条1項
判旨
刑事訴訟法313条1項に基づく弁論再開請求に対し、裁判所は何らかの決定をすべきであるが、再開の必要がないことが明らかな場合に決定を経ず判決を宣告したとしても、その形式的違法は判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法313条1項に基づく弁論再開の請求に対し、裁判所が決定を経ずに判決を宣告した場合の訴訟手続の違法性と、判決への影響。
規範
刑事訴訟法313条1項は当事者に弁論再開請求権を認めているため、請求があった場合、裁判所は裁量により再開の可否を決すべきであるが、再開するか否かのいずれかの決定を与えなければならない。もっとも、決定を欠くまま判決を宣告した場合であっても、実質的に却下の決定がなされたと同視でき、再開の必要がないと認められる状況であれば、当該違法は判決に影響を及ぼさない(同法379条参照)。
重要事実
被告人の弁護人は、控訴審の弁論終結後、証人2名の再尋問を求めて弁論再開申請書を提出した。原審裁判所は、右再開申請に対して何ら許否の決定を与えることなく、そのまま判決を宣告した。なお、当該証人2名については既に原審において尋問が実施されており、再尋問を求める事項についても既に供述がなされていたという事情があった。
事件番号: 昭和38(あ)1661 / 裁判年月日: 昭和38年12月25日 / 結論: 棄却
原審において、弁護人から弁償に関し、理由を具し書証を添付して弁論再開の請求があつたにかかわらず、原審としては今更証拠の取調のため弁論を再開する必要はないものと認め、何等の決定もせず再開を許さないまま判決を宣告したものであると解される場合には、原審の右措置は正当であつて、原審が再開を許さないで判決するについては、判決宣告…
あてはめ
原審が弁論再開請求に対し何ら決定をせずに判決を宣告した点には、形式上の違法が認められる。しかし、本件で再尋問が求められた証人は既に尋問済みであり、その供述内容に照らせば再開の必要性は認められない。したがって、原審は再開の必要がないと判断して判決を宣告したものと解され、実質的には却下決定がなされたといえる。よって、形式的な決定を欠いた違法は判決に影響を及ぼすものではないと評価される。
結論
弁論再開請求に対し決定を与えなかった点に形式的な違法はあるが、再開の必要性がない本件では判決に影響を及ぼさないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
裁判所の決定懈怠という手続違法を論じる際の枠組みとして機能する。実務上は、弁論再開の必要性(新証拠の重要性や審理不尽の有無)が実質的な判断要素となる。答案上は、まず決定をすべき義務を指摘した上で、379条(判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反)の観点から、実質的な必要性の有無をあてはめる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3352 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
裁判所が検察官の申請により鑑定人を取り調ぶべき旨の証拠決定をしたのにかかわらず、証拠決定を施行せず、またその取消をしないで弁論を終結するに当つて、申請当事者たる検察官がこれにつき異議を述べなかつた場合には、特段の事情がないかぎり検察官はその申請にかかる鑑定の施行を維持する意思がなかつたものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和27(あ)2704 / 裁判年月日: 昭和29年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が起訴状記載の訴因と実質的に異ならない犯罪事実を認定する場合、訴因変更の手続きを経ずとも、被告人の防御権を不当に制限しない限り違法ではない。 第1 事案の概要:被告人らが虚偽の運賃請求を真実の運賃請求のように装って金銭を騙取したという詐欺事件において、第一審判決が認定した事実と起訴状記載の訴…