一 本件犯罪のように併合罪関係にある数罪は、立証手続のうえにおいても別個独立の犯罪として取り扱われるべきもので、この数毎に補強証拠を必要とし、しかも、その補強証拠たるや、その犯罪の各構成要件事実それ自体に関連するものであることを要するものと解するのが相当であり、所論原判示のように、適法な証拠により認め得られるものであるにせよ、その犯罪以外の他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体が情況証拠としてその犯罪に関する自白を補強するに十分なものであるとすることは、採証法則の違反、ないし訴訟法の解釈を誤つた違法があるものといわなければならない。 二 前示A株式会社関係の犯罪事実は、被告人にかかる本件犯罪一〇個のうちの一個であり、その犯行にかかる金額も、全額四五八四万七〇四九円のうちの一〇〇万円、約四五分の一にすぎないこと、従つて、併合罪による刑の加重も右犯罪事実以外のものを最も重しとしてなされていること等にかんがみれば、刑訴法第四一一条第一号により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとまでは認められない。
一 一の犯罪事実の自白の補強証拠として他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体を援用することの適否。 二 刑訴法第四一一条第一号にあたらない事例。
憲法38条3項,刑訴法317条,刑訴法319条2項,刑法45条
判旨
併合罪の関係にある数罪については、各罪ごとに補強証拠を必要とし、他の犯罪事実の存在をもって自白の補強証拠とすることはできない。
問題の所在(論点)
刑法45条前段の併合罪として処理される複数の犯罪事実について、一つの罪の存在(または他罪の証拠)を、別の罪の自白に対する補強証拠(刑訴法319条2項)として用いることができるか。
規範
併合罪関係にある数罪は、立証手続上も別個独立の犯罪として取り扱われるべきである。したがって、各罪ごとに自白の補強証拠(刑訴法319条2項)を必要とし、その補強証拠は当該犯罪の各構成要件事実それ自体に関連するものであることを要する。他の犯罪事実の存在は、当該犯罪に関する自白の補強証拠とはなり得ない。
事件番号: 昭和33(あ)1452 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦人以外の居住者が、自己が外国において有する外国銀行預金にもとづいて、本邦内で小切手を振出した場合も、外国為替等集中規則第三条第一項にいう対外支払手段の「取得」にあたる。
重要事実
被告人は合計10個の犯罪事実につき併合罪として起訴された。第一審判決は、そのうちA株式会社を相手方とする犯罪事実について、被告人の捜査官に対する自白以外に具体的な補強証拠を掲げていなかった。原判決は、同種犯行が他に9回重ねられている事実があるから、これが自白の真実性を保障する情況証拠となり、補強証拠として十分であると判断して第一審判決を維持した。
あてはめ
本件におけるA社関係の犯罪事実は、他の9個の犯罪事実とは別個独立の構成要件を具備すべき罪である。原判決が、他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体をもって、A社事件の自白を補強する情況証拠としたことは、自白の補強法則に関する訴訟法の解釈を誤った違法がある。もっとも、本件ではA社事件の被害額が全体の約45分の1に過ぎず、量刑上の影響も限定的であるため、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
併合罪の各罪には個別に構成要件事実に関連する補強証拠が必要であり、他罪の存在を補強証拠とすることはできない。ただし、本件では当該違法が判決に及ぼす影響が限定的であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
併合罪の立証において、同種犯行の存在をもって安易に自白の補強を認めてはならないという厳格な原則を示している。答案上、複数の罪が成立する事案で自白の補強法則を論じる際は、各罪ごとに証拠を精査する必要があることを示す指針となる。
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…
事件番号: 昭和37(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に…
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和37(あ)1250 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
所論は、本件適用法令たる外国為替及び外国貿易管理法(以下、単に法という。)第二七条第一項第三号前後の憲法第一三条第二九条第一項違反を主張する。しかし、右規定が国民の経済活動、ひいて財産権の行使に対しある程度の制限を加えているものであることは疑いがないけれども、右制限は、法第一条の掲げる諸目的に照らし、これを阻害する事態…