弁護人の上告趣意は、違憲をいうが、公職選挙法第二二一条第一項第一号及び四号は、公職に関する選挙の公正を確保するために設けられた規定であり、右規定によつて報酬の授受が禁止されている選挙運動者となることは個人の自由意思に委ねられているわけであるから、右規定が憲法二九条に違反するという主張は、その前提において採ることをえない。
公職選挙法第二二一条第一項第一号、第四号と憲法第二九条。
公職選挙法211条1項1号,公職選挙法211条1項4号,憲法29条,刑訴法405条1号
判旨
公職選挙法221条1項1号及び4号による選挙運動者への報酬授受の禁止は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項1号及び4号が、選挙運動者に対する報酬の授受を禁止していることは、憲法29条が保障する財産権を侵害し違憲ではないか。
規範
公職に関する選挙の公正を確保するという重要な公共の利益を目的とする制限については、その制限が目的達成のために必要かつ合理的である限り、憲法上の財産権等の保障に反しない。また、制限の対象となる地位に就くことが個人の自由意思に委ねられている場合、その地位に伴う制約は憲法違反の問題を生じにくい。
重要事実
被告人は、公職選挙法221条1項1号(買収罪)及び4号(利害誘導罪)に規定される、選挙運動者に対する報酬の授受禁止規定に抵触する行為を行ったとして起訴された。これに対し弁護人は、当該規定が選挙運動者の財産権を不当に制限するものであるとして、憲法29条違反を主張して上告した。
あてはめ
本件規定は、公職に関する選挙の公正を確保することを目的として設けられたものである。選挙の公正は民主主義の根幹をなす重要な公の利益である。また、報酬の授受が禁止されている「選挙運動者」となるか否かは、個人の自由意思に委ねられている。したがって、自らの意思でその地位に就いた以上、選挙の公正確保のために課される報酬受領の制限を甘受すべきであり、これが個人の自由を不当に拘束するものとはいえない。以上から、本件規定は合理的な制限の範囲内にあると解される。
結論
公職選挙法221条1項1号及び4号は、憲法29条に違反しない。
実務上の射程
選挙運動の自由や財産権に対する制限の合憲性を論じる際の基礎的判例である。特に「自由意思による地位の選択」という論理は、特定の職務や活動に従事することに伴う権利制限の合理性を基礎付ける有力な考慮要素として、答案上活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)899 / 裁判年月日: 昭和39年11月18日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法第一四二条の規定は、選挙運動期間前の行為にも適用がある。 二 同条は憲法第二一条に違反しない。 三 本人の写真、経歴を掲げ「大なる政治家として大成させて戴きたい」等の記載をした本件文書は、公職選挙法第一四二条第一項の違法文書に当る。