公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)221条1項1号の規定違憲(憲法21条)の主張が欠前提処理された事例
憲法21条,公職選挙法(平成6年法律2号による改正前のもの)221条1項1号
判旨
公職選挙法221条1項1号が定める選挙運動者に対する買収の禁止規定は、憲法21条に違反しない。当該規定は、金権選挙を防止し選挙の公正を確保するものであり、表現活動そのものを制約するものではない。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項1号のうち、選挙運動者に対する買収を禁止する規定が、憲法21条の保障する表現の自由を侵害し違憲ではないか。
規範
公職選挙法221条1項1号(改正前)の規定は、当選を得、若しくは得しめ、又は得しめない目的をもって、選挙人又は選挙運動者に対し買収行為をすることを禁ずるものである。この規定は、純粋な言論・表現活動そのものを制約するものではなく、選挙の公正を害する金銭的利益の授受という行為を規制対象とするものであるため、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。
重要事実
被告人は、特定の候補者の当選を図る目的で、選挙運動者に対し金銭を供与したとして公職選挙法221条1項1号(買収罪)等に問われた。これに対し弁護人は、選挙運動者に対する買収の禁止を定める部分は、選挙運動という表現活動を不当に制約するものであり、憲法21条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
公職選挙法の当該規定は、選挙の公正を確保するために、特定の目的を持った金銭等の供与という「買収行為」を禁止しているにすぎない。選挙運動者の政治的意思決定や運動の形態を金銭によって歪める行為を規制することは、健全な民主主義のプロセスを維持するために不可欠である。したがって、この規制は選挙運動に伴う表現活動そのものの内容や方法を制限する性質のものではなく、表現の自由を不当に侵害しているとはいえない。また、事前運動の禁止についても、過去の判例(最大判昭44.4.23)の趣旨に照らせば合憲であることは明らかである。
結論
公職選挙法221条1項1号の選挙運動者に対する買収禁止規定は、憲法21条に違反せず、合憲である。
実務上の射程
選挙運動の自由を制限する規定の違憲性が争われる際、特に「買収」のような金銭的行為については、表現の自由の直接的な制約には当たらないとする判断枠組みを示す際に活用できる。事前運動禁止(129条)と並び、選挙の公正確保を目的とする法規制の正当性を基礎づける短文判例として有用である。
事件番号: 昭和37(あ)1043 / 裁判年月日: 昭和37年9月11日 / 結論: 棄却
弁護人の上告趣意は、違憲をいうが、公職選挙法第二二一条第一項第一号及び四号は、公職に関する選挙の公正を確保するために設けられた規定であり、右規定によつて報酬の授受が禁止されている選挙運動者となることは個人の自由意思に委ねられているわけであるから、右規定が憲法二九条に違反するという主張は、その前提において採ることをえない…