公職選挙法一二九条、一三八条、一四二条の各規定は、憲法二一条に違反しない。
公職選挙法一二九条、一三八条、一四二条の各規定と憲法二一条
公職選挙法129条,公職選挙法138条,公職選挙法142条,憲法21条
判旨
公職選挙法129条による選挙運動期間の制限は、選挙の公正を確保し、経済力の差による不公平や選挙の腐敗を防止するという公共の福祉のための必要かつ合理的な制限であり、憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法129条が、選挙運動の期間を立候補の届出後から投票日の前日までに限定し、いわゆる事前運動を禁止していることは、憲法21条が保障する表現の自由を侵害し違憲ではないか。
規範
表現の自由といえども、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を受け得る。選挙運動の規制については、不当・無用な競争による不正行為の発生や選挙の公正を害するおそれ、経済力の差による不公平、経費や労力のかさみによる選挙の腐敗を防止するという目的が正当であり、その目的達成のために運動期間を限定し、各候補者を同一条件の下に置くことは、合理的かつ必要な制約といえる。
重要事実
被告人が、公職選挙法129条が定める選挙運動期間外(立候補の届出前)に選挙運動(事前運動)を行ったとして、同法違反に問われた事案である。被告人側は、同法129条の事前運動禁止規定、138条の戸別訪問禁止規定、142条の文書図画頒布制限規定は、いずれも憲法21条の表現の自由を侵害し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
常時選挙運動を許容すると、規制困難による不正行為から選挙の公正が害されるのみならず、経済力の差による不公平や選挙の腐敗を招くおそれがある。本条は、期間を限定し始期を一定にすることで、全候補者が同一条件で活動することを保障しようとするものである。これは「公共の福祉」を維持するための必要かつ合理的な制限であり、選挙の公正確保という正当な目的に対し、期間制限という手段は合理的な関連性を有すると解される。
結論
公職選挙法129条(および138条、142条)は、憲法21条に違反しない。したがって、事前運動を禁止した規定を適用した原判決に憲法違反の誤りはない。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限が「必要かつ合理的な制限」として合憲とされる際の基本的枠組みを示す。特に事前運動の禁止については、候補者間の平等と経済的弊害防止を重視している。もっとも、現代の判例理論(二重の基準論等)に照らせば、本判決の「必要かつ合理的」という緩やかな基準のみでは不十分とされる場合があり、答案上は目的・手段の厳格な審査を検討する際のベースラインとして活用すべきである。
事件番号: 昭和40(あ)1297 / 裁判年月日: 昭和41年4月21日 / 結論: 棄却
弁護人遊田多聞の上告趣意第二点は、公職選挙法第一二九条、第二三九条の各規定は、憲法第三一条に違反し、同第九八条第一項によつて無効であると主張するが、公職選挙法における選挙運動の意義が所論の如く不明確であるとはいえないし、同第一二九条はこの選挙運動を一定の期間においてのみなすことを許し、同第二三九条はこれに違反した者を処…