一 公職選挙法一二九条、二三九条一号、一四二条一項、二四三条三号(昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)の合憲性 二 公職選挙法一二九条、一四二条一項にいう「選挙運動」の意義
憲法15条,憲法21条,憲法31条,公選法129条,公選法142条1項,公選法239条1号,公選法243条3号
判旨
公職選挙法上の「選挙運動」とは、特定の選挙につき特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な諸般の行為を指すと定義される。この定義は広範かつ不明確とはいえず、同法による文書頒布規制や事前運動禁止規定は憲法21条等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法129条、142条1項等にいう「選挙運動」の意義が不明確であり、憲法21条、31条に違反しないか。
規範
「選挙運動」とは、特定の選挙が予測または確定した状況下で、特定の候補者(立候補が予測される者を含む)の当選を目的として、投票を得または得させるために、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘、誘導その他諸般の行為をなすことをいう。
重要事実
被告人が、公職選挙法129条(事前運動の禁止)および142条1項(文書頒布の制限)等に違反する行為を行ったとして起訴された事案。弁護人側は、同法が規定する「選挙運動」の概念が広範かつ不明確であり、表現の自由を保障する憲法21条や適正手続を定める憲法31条等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
判例の示す定義によれば、選挙運動の成立には「特定の選挙」および「特定の候補者」の存在を前提とし、かつ「当選目的」という主観的要素が必要とされる。さらに、行為の内容も「投票を得るために直接または間接に必要かつ有利な行為」と限定されている。このような解釈によれば、禁止される行為の範囲は十分に特定されており、処罰範囲が不当に広範である、あるいは一般人に予見困難なほど不明確であるとはいえない。
結論
公職選挙法における「選挙運動」の定義は合憲であり、これを前提とした文書頒布規制や事前運動禁止規定も憲法21条、31条等に違反しない。
実務上の射程
司法試験において選挙運動の定義(目的・時期・態様)を記述する際の基礎となる判例である。あてはめでは、単なる政治活動(特定の選挙・候補者を離れた政策普及等)と、本規範に該当する選挙運動をいかに区別するかがポイントとなる。
事件番号: 昭和35(あ)2218 / 裁判年月日: 昭和36年2月7日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法一二九条、一四二条等にいわゆる「選挙運動」には、同法一三八のいわゆる戸別訪問禁止の規定にいう「投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的」のごとき投票依頼等の目的を要件としないものと解すべきである。 二 ある団体の推せん候補者であることが当選獲得に効果があると認めれる場合に、同団体員でない者が甲某に当選を得…