判旨
検察官に対する供述調書等における不可分の供述については、その一部を分離して異なる意味の内容として証拠評価することは許されない。
問題の所在(論点)
供述証拠の評価において、一連の不可分な供述の一部を分離し、本来とは異なる意味内容として事実認定の基礎にすることが許されるか(供述の不可分性と証拠評価の合理性)。
規範
供述内容を証拠として評価する際、意味内容において不可分な関係にある供述の一部を切り離し、本来の供述とは異なる意味のものとして認定することは、証拠の不当な評価として許されない。
重要事実
被告人Aの検察官に対する供述調書において、ある一定の文脈でなされた不可分の供述が存在した。原判決は、この供述の一部を分離して取り出し、本来の趣旨とは異なる意味のものとして解釈した上で、被告人の供述内容に変転性があると認定した。
あてはめ
本件では、被告人Aの検察官に対する供述調書のうち、内容的に分離できない一部分のみを抽出し、供述者の真意とは異なる意味を付与して「供述の変転」を認めた原判決の判断手法には瑕疵がある。もっとも、本件の具体的な諸事情に照らせば、当該部分の違法は直ちに判決の結果に影響を及ぼすほど重大なものとはいえない。
結論
原判決の証拠評価には供述の不可分性を無視した瑕疵が認められるが、判決に影響を及ぼすべき法令違反とまではいえないため、上告は棄却される。
実務上の射程
伝聞証拠や供述調書の証明力を争う際、供述の一部を「つまみ食い」的に引用して弾劾したり、事実認定の基礎としたりする手法を牽制する規範として活用できる。特に供述の変転性や信用性を判断する場面で、文脈を無視した部分的な抽出がなされた場合の違法主張に有効である。
事件番号: 昭和36(あ)1451 / 裁判年月日: 昭和36年10月26日 / 結論: 棄却
一 所論は被告人及び部下課員の二次会における飲食代等に費消された分につき原判決が平等分割によらず、全額を同被告人から追徴した部分は引用の大審院判例に違反するというのであるが、原判決は、「被告人Aが受取り、自己の責任で処分したものであり、右各金員は一旦Aの利益に帰し、同被告人の自由処分に任された後、同被告人において部下課…