一 所論は被告人及び部下課員の二次会における飲食代等に費消された分につき原判決が平等分割によらず、全額を同被告人から追徴した部分は引用の大審院判例に違反するというのであるが、原判決は、「被告人Aが受取り、自己の責任で処分したものであり、右各金員は一旦Aの利益に帰し、同被告人の自由処分に任された後、同被告人において部下課員をもてなしたもの」を認定しているのであつて、同被告人が部下課員と共同して収賄しその利益を分配したものとは認めていないのであるから、引用の判例は本件に適切でなく、従つて判例違反の主張は前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 二 ○引用の判例大審院昭和九年(れ)第六一五号同年七月一六日判決(刑集一三巻九七二頁)数人共同して賄賂を収受したる場合に其の費消したる賄賂を追徴するには各自の分配額に応じ之を行うべきものとす。共同収賄の事件に付ては分配の有無並分配額を判示して追徴額の基本を明らかにするを適当とす。
判例(共同収賄と追徴との関係)違反の主張がその前提を欠く事例。
刑法197条,刑法197条ノ5,刑訴法405条3号
判旨
収賄罪において、収受した賄賂が被告人の自由な処分に任された後に部下の接待等に充てられた場合、共同して収賄し利益を分配したとは認められず、収受者本人からその全額を追徴すべきである。
問題の所在(論点)
収受した賄賂を部下の接待費用に充てた場合、その全額を被告人から追徴することができるか。あるいは共同収賄の法理により分割して計算すべきか。
規範
刑法197条1項前段の収賄罪における追徴(刑法197条の5)に関し、収賄者が賄賂を単独で収受し、一旦その利益が当該収賄者に帰属して自由な処分が可能な状態になった場合には、その後に当該金員が他者のために費消されたとしても、収受者本人がその全額を保持・処分したものとして追徴の対象となる。共同収賄として利益を分配した場合とは区別される。
重要事実
通商産業省(当時)の重工業課長であった被告人Aは、職務に関連して金員を収受した。被告人はその金員を、自身および部下課員の二次会における飲食代等に費消した。被告人側は、部下のために費消された分については平等分割の原則に基づき、被告人個人から全額を追徴することはできないと主張して争った。
あてはめ
本件において被告人Aは賄賂を自ら受け取り、これを自己の責任において処分している。この事実は、収受した金員が一旦被告人Aの利益に帰し、その自由な処分に任されたことを意味する。部下の飲食代への充当は、被告人が自己の裁量で部下をもてなしたに過ぎず、部下と共同して収賄し、最初から利益を分配した関係にはない。したがって、金員全額が被告人の利得として評価される。
結論
被告人が賄賂を自己の責任で処分した以上、その全額を被告人から追徴するのが相当である。
実務上の射程
追徴の範囲を決定する際、賄賂の「収受」が完了し、収賄者の支配下に入った後の使途は追徴額に影響しないことを示す。共同正犯間での分配(平等分割)が問題となるケースと、単独収賄後の事後消費(全額徴収)を区別する際の判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3026 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】収賄者が賄賂を享受した後に、贈賄者に同額の金員を返還したとしても、賄賂そのものを返還したのではない限り、既に享受した利益について追徴される責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、それぞれ贈賄者から現金を受領して収賄した。Aは受領した現金の約2割を費消し、残額を妻が他の預…