刑法第二三四条にいう「業務」の意義に関する原判示は正当である。 (原判示の要旨)刑法第二三四条にいわゆる「業務」とはひろく職業その他継続して従事する事務又は事業であつて社会上の地位として事実上平穏に行われているものを総称するものと解するを相当とする。
刑法第二三四条にいう「業務」の意議。
刑法234条
判旨
刑法234条の威力業務妨害罪における「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務又は事業を指し、強制執行などの権力的な公務もこれに含まれる。
問題の所在(論点)
刑法234条の威力業務妨害罪における「業務」に、強制執行等の権力的公務が含まれるか否か。
規範
刑法234条にいう「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき、継続して従事する事務又は事業をいう。公務については、それが権力的公務であるか私経済的公務であるかを問わず、強制執行等の権力的公務であっても、その実体が継続的な事務の遂行である限り、同条の「業務」に該当する。
重要事実
上告人は、執行官が行う強制執行の手続を妨害したとして、威力業務妨害罪(刑法234条)に問われた。上告人側は、強制執行のような権力的公務は、公務執行妨害罪(刑法95条)の対象にはなり得るものの、威力業務妨害罪にいう「業務」には含まれないと主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、原判決の判断を正当として引用するにとどまるが、その前提として、威力業務妨害罪の保護法益を業務の円滑な遂行という社会的利益と解している。強制執行等の権力的公務であっても、それが社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務である以上、業務としての性質を具備しているといえる。したがって、公務執行妨害罪が成立する場合であっても、威力の態様によっては威力業務妨害罪の成立を妨げないものと解される。
結論
刑法234条の「業務」には権力的公務も含まれる。したがって、強制執行を威力により妨害した行為について威力業務妨害罪の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
公務に対する妨害行為について、刑法95条の公務執行妨害罪(暴行・脅迫を要件とする)のみならず、威力を用いた場合には刑法234条の適用があり得ることを示した重要判例である。答案上は、公務が「業務」に含まれるかを論ずる際、職能的な継続性に着目して規範を定立し、強制執行等の権力的事務であっても否定されないと述べる際に活用する。
事件番号: 昭和36(あ)823 / 裁判年月日: 昭和41年11月30日 / 結論: 棄却
一 国定の行なう事業ないし業務は、刑法第二三三条、第二三四条にいう業務に含まれる。 二 国鉄の業務が、これに対する妨害に対し、業務妨害罪または公務執行妨害罪の保護を受け、民営鉄道の業務との間に、法律上の保護に差異があることは、憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和37(あ)426 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条の「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解する相当とし、かつ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきである(昭和二五年(れ)第一八六四…
事件番号: 昭和37(あ)3008 / 裁判年月日: 昭和38年7月12日 / 結論: 棄却
本件政党の結党大会がその結党大会準備委員会の業務として、刑法第二三四条にいわゆる「業務」にあたる旨の原判示は正当である。