一 国定の行なう事業ないし業務は、刑法第二三三条、第二三四条にいう業務に含まれる。 二 国鉄の業務が、これに対する妨害に対し、業務妨害罪または公務執行妨害罪の保護を受け、民営鉄道の業務との間に、法律上の保護に差異があることは、憲法第一四条に違反しない。
一 国鉄の事業ないし業務は刑法第二三三条第二三四条にいう業務に含まれるか 二 国鉄の業務と民営鉄道の業務との間の法律上の保護の差異と憲法第一四条
刑法233条,刑法234条,刑法95条1項,憲法14条
判旨
日本国有鉄道(国鉄)の現業業務は、実態において民営鉄道と異ならないため、刑法233条および234条の「業務」に含まれる。また、国鉄職員の業務執行に対する妨害には、威力業務妨害罪のみならず、公務執行妨害罪も重畳的に成立し得る。
問題の所在(論点)
日本国有鉄道(当時)のような特殊な公法人が行う現業業務が、刑法233条・234条にいう「業務」に該当するか。また、公務執行妨害罪(刑法95条)が成立し得る場合に、重ねて業務妨害罪が成立するか。
規範
刑法233条および234条の「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務を指す。法人が公法上の法人であり、その職員が法令により公務に従事する者とみなされる場合であっても、その行う事業の実態が権力的作用を伴わない非権力的な現業事務であるときは、当該事務は「業務」に含まれる。また、同一の行為が「業務」と「公務」の性質を併せ持つ場合、妨害行為に対して業務妨害罪と公務執行妨害罪が重畳的に成立することを妨げない。
重要事実
被告人らは、日本国有鉄道(国鉄)の職員による争議行為に関連して、国鉄の鉄道事業の執行を妨害した。被告人らは、国鉄の業務は公務であり、刑法上の「業務」には該当しない、あるいは公務執行妨害罪のみが検討されるべきであり、業務妨害罪を適用することは民営鉄道との差別や罪刑法定主義に反すると主張して上告した。
あてはめ
国鉄は公法上の法人であり、職員は公務員とみなされるが、その事業実態は鉄道輸送等であり、権力的作用を伴わない。この実態は民営鉄道と何ら異ならないため、民営鉄道の業務が保護され、国鉄の業務が保護されないとする合理的理由はない。したがって、国鉄の現業業務も「業務」に含まれる。また、国鉄の業務は公共性が高く公務としての性質も有するため、妨害の態様によっては業務妨害罪と公務執行妨害罪の両罪が成立し得るが、これは二重の保護ではなく、業務の特殊性に基づく正当な評価である。
結論
国鉄の行う事業ないし業務は刑法233条、234条にいう「業務」に含まれる。国鉄の現業業務に対する妨害には、手段方法に応じ、業務妨害罪のほか公務執行妨害罪が成立することもある。
実務上の射程
公務と業務の区別について、「権力的公務」については公務執行妨害罪のみが成立し、業務妨害罪の適用はないとするのが通説的理解であるが、本判決は「非権力的公務(現業事務)」については両罪が重畳的に成立し得ることを示している。答案上は、公務の性質(権力的か非権力的か)を認定した上で、本判決を根拠に業務妨害罪の成否を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和46(あ)1330 / 裁判年月日: 昭和53年3月3日 / 結論: 破棄自判
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
事件番号: 昭和43(あ)1684 / 裁判年月日: 昭和45年7月21日 / 結論: 棄却
公共企業体等労働関係法一七条一項に違反してなされた争議行為についても、労働組合法一条二項の適用がある。
事件番号: 昭和36(あ)678 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条にいう「業務」の意義に関する原判示は正当である。 (原判示の要旨)刑法第二三四条にいわゆる「業務」とはひろく職業その他継続して従事する事務又は事業であつて社会上の地位として事実上平穏に行われているものを総称するものと解するを相当とする。