判旨
無罪部分の立証のために生じた証人尋問の費用など、被告人の責めに帰すべき事由によらない訴訟費用を被告人に負担させることは、刑事訴訟法181条1項の解釈として違法である。
問題の所在(論点)
刑の言渡しをする際、被告人が無罪となった部分の立証に関して生じた訴訟費用を、被告人に負担させることができるか。刑事訴訟法181条1項ただし書の趣旨に照らした負担の範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法181条1項によれば、刑の言渡しをする場合には被告人に訴訟費用を負担させるのが原則であるが、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用とは認められないもの(無罪部分に関する証人尋問費用など)については、被告人に負担させるべきではない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反の罪で起訴された事案において、第一審判決は一部の犯罪事実について無罪を言い渡したが、原判決(控訴審)は、無罪とされた部分に関する証人尋問によって生じた証人2名に対する支給費用を含め、訴訟費用の全部を被告人の負担とした。
あてはめ
本件における証人2名の尋問費用は、第一審において無罪の言渡しがあった事実に関する立証のために生じたものである。このような費用は、有罪となった事実とは直接の関係がなく、被告人の責めに帰すべき事由によって生じた費用とは認められない。したがって、これを被告人に負担させた原判決は違法であり、著しく正義に反する(刑訴法411条1号)。
結論
被告人の責めに帰すべき事由によらない費用を被告人負担とした原判決は破棄を免れない。無罪部分に関する証人費用を除いた余の部分に限り、被告人に負担させるべきである。
実務上の射程
一部無罪や公訴棄却が混在する事案において、訴訟費用の負担命令を出す際の基準となる。実務上、被告人の防御活動や無罪判決に係る正当な手続によって生じた費用を切り分けて負担させるべきとする点で、刑罰権の行使と費用の公平な分担を画する射程を持つ。
事件番号: 昭和37(あ)2986 / 裁判年月日: 昭和38年4月26日 / 結論: 棄却
刑訴法第一八一条第一項は憲法第三七条第二項に違反しない。このことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第三一六号同年一二月二七日大法廷判決、刑集二巻一四号一九三四頁・昭和三四年(あ)第一五二〇号同三五年一月一九日第三小法廷判決、刑集一四巻一号一八頁)の趣旨に照らして明らかである。
事件番号: 昭和25(あ)3190 / 裁判年月日: 昭和25年10月19日 / 結論: 棄却
右憲法第三七条第二項の規定は証人尋問に要する費用は、すべて国家でこれを支給し、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることなく、被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求する自由が妨げられてはならないという趣旨であつて、もつぱら判事被告人をして訴訟上の防禦を遺憾なく行使せしめんとする法意にもとず…