金銭を目的とする消費貸借上の利息又は損害金の契約は、その額が利息制限法一条、四条の各一項にそれぞれ定められた利率によつて計算した金額を超えるときは、その超過部分につき無効であるが、債務者が、それを任意に支払つたときは、その後において、その契約の無効を主張し、既にした給付の返還を請求することができないばかりでなく、結果において返還を受けたと同一の経済的利益を生ずるような、残存元本への充当も許されないものと解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和三五年(オ)一〇二三号、同三七年六月一三日大法廷判決)の示すところである。
任意に支払われた法定の制限超過の利息、損害金は残存元本に充当されるか。
利息制限法1条1項,利息制限法1条2項,利息制限法4条1項,利息制限法4条2項,利息制限法2条,法人税法48条1項
判旨
利息制限法の制限を超える利息・損害金の支払について、債務者が任意に支払った場合は、その超過部分の返還請求のみならず、残存元本への充当も認められない。また、債権の発生は財産の増加であり、法人税法上の所得として課税対象となることは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 利息制限法の制限利率を超える利息・損害金を任意に支払った場合、その超過部分を残存元本に充当することができるか。2. 債権の発生を所得として課税することは、憲法29条が保障する財産権を侵害するか。
規範
金銭を目的とする消費貸借上の利息または損害金の契約において、利息制限法所定の利率を超える超過部分は無効である。しかし、債務者がこれを任意に支払ったときは、その無効を主張して返還を請求することはできず、また、残存元本への充当も認められない(昭和37年6月13日大法廷判決参照)。さらに、債権の発生は「財産の増加」を意味し、法人税法上の所得に該当するため、これへの課税は財産権の不当な侵害(憲法29条違反)には当たらない。
重要事実
本件は、利息制限法を超える利息等の支払いを受けたこと等に関連し、法人税法違反(脱税)等の罪に問われた刑事事件の上告審である。被告人側は、利息制限法を超える超過支払分は無効であり、元本に充当されるべきであるから所得は存在しない旨、および債権の発生に課税することは財産権を侵害し違憲である旨を主張して上告した。
あてはめ
1. 利息制限法の規定に関し、当裁判所は先行する大法廷判決(昭37.6.13)により、任意に支払われた制限超過利息等については返還請求のみならず元本充当も否定する判断を確立している。本件においても、債務者が任意に支払った事実に照らせば、当該法理が適用され、元本への充当は認められない。2. 租税法上、所得とは経済的な効益の流入を指し、新たな債権を取得することは純資産の増加、すなわち財産の増加に他ならない。したがって、これを所得として課税の対象とすることは、租税徴収の適正な範囲内であり、憲法が保障する財産権の侵害には当たらない。
結論
制限超過利息等の任意支払分について元本充当は認められず、また、債権の発生を所得として課税することは憲法に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
利息制限法に関する元本充当の判断は、その後の昭和39年大法廷判決により「当然充当される」と変更されたため、民事上の規範としての射程は失われている。一方、所得の本質を「財産の増加」と捉え、債権の発生に課税することを合憲とした判断は、法人税法等の所得概念を理解する上での基礎的な法理として現在も意義を持つ。
事件番号: 昭和40(あ)1730 / 裁判年月日: 昭和41年9月7日 / 結論: 棄却
一 法人税法第九条二項前段、第四二条によつて、法人の所得の計算上損金に算入されるべき利子税額に相当する法人税をいずれの事業年度の損人に算入すべきは、同法の解釈上当然定まつていると解すべきであり、この解釈は、行政庁の通達によつて決定もしくは変更されるものではないから、憲法第八四条違反の主張は、その前提を欠き上告適法の理由…
事件番号: 昭和38(あ)961 / 裁判年月日: 昭和39年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実質課税の原則は、明文の規定が設けられる以前から税法上の条理として是認されていたものであり、これを明文化した規定の施行前の所得に対しても、当該原則を適用して課税することは合憲である。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和27年分の煙草小売所得について、Cの名義を用いて事業を行っていた。原審は、実質課…