原判決の支持した第一審判決によれば被告人は昭和三五年一一月二〇日施行された衆議院議員総選挙に際し(中略)かねて右選挙に立候補の決意を有していたAの選挙運動者であるB某及C某両名から右Aに当選を得せしめる目的で投票取りまとめ方を依頼されその報酬として現金の供与をうけたものであるというのであり、このような場合はやがて施行されるであろう選挙の運動というを妨げないものと解されるから、所論のように選挙が特定されていないものというを得ない(大審院昭和一一年(れ)第一〇〇二号同年七月六日第二刑事部判決、刑集一五巻九四三頁参照)。
将来行なわるべき選挙が特定されているとした事例
公職選挙法129条,公職選挙法239条,公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項4号
判旨
選挙運動の時期について、公職選挙法上の「選挙運動」といえるためには、必ずしも選挙が公示・告示されている必要はなく、特定の選挙について立候補を予定する者に対し、当選させる目的で報酬の供与等を行う行為も「選挙運動」に該当する。
問題の所在(論点)
公職選挙法における「選挙運動」の意義、とりわけ選挙が特定されているといえるための時期的な要件が問題となる。
規範
「選挙運動」とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を図るため、選挙人に働きかける行為を指す。この点、選挙運動の時期について制限はなく、将来施行されることが予定されている特定の選挙のために行われる活動も、これに含まれる。
重要事実
被告人は、昭和35年11月20日施行の衆議院議員総選挙に際し、立候補を決意していたAの選挙運動者であるB及びCから、Aを当選させる目的で投票の取りまとめを依頼された。その際、被告人はその報酬として現金の供与を受けた。
あてはめ
本件において、被告人が現金の供与を受けた時点では、まだ選挙の施行前であったが、既に立候補を決意していたAを当選させるという明確な目的が存在していた。このような「やがて施行されるであろう選挙」に向けた活動は、特定の選挙のための運動としての実質を有しており、選挙が特定されていないとはいえない。したがって、当該行為は報酬を伴う選挙運動として、同法の禁止する買収罪等の構成要件に該当すると評価される。
結論
将来施行される特定の選挙に向けた投票取りまとめ及び報酬受領は、公職選挙法上の選挙運動に該当する。したがって、被告人の上告を棄却し、有罪とした原判決を維持する。
実務上の射程
公職選挙法上の「選挙運動」概念の広汎性を確認する判例である。公示・告示前のいわゆる「事前運動」であっても、特定の選挙・候補者を目的とする限り、買収罪等の処罰対象となることを示す際に引用すべきである。
事件番号: 昭和35(あ)2218 / 裁判年月日: 昭和36年2月7日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法一二九条、一四二条等にいわゆる「選挙運動」には、同法一三八のいわゆる戸別訪問禁止の規定にいう「投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的」のごとき投票依頼等の目的を要件としないものと解すべきである。 二 ある団体の推せん候補者であることが当選獲得に効果があると認めれる場合に、同団体員でない者が甲某に当選を得…