所論は、選挙に関する情報の蒐集は選挙運動でないという見解の下に原審の判断が判例に違反するというのであるが、第一審判決の事実認定によれば、被告人はAを通じBに対し同人がC候補の選挙情報の蒐集並投票取纏等の運動をすることに対する報酬等の趣旨の下に金五千円を供与したというのであつて、所論情報蒐集の点だけを処罰したものではなく、また引用の判例を目して所論のように情報蒐集が選挙運動でないとする趣旨に解することはできないから右判例は本件に適切でない(なお昭和一二年三月五日大審院判決集一六巻二六七頁参照)。
一 引用の判例に独自の見解を附して判例違反を主張した上告の適否 二 選挙情報蒐集等に従事する選挙運動者に対する金員の供与と公職選挙法第二二一条第一項第三号の供与罪の成否
刑訴法405条,公職選挙法221条1項3号
判旨
選挙に関する情報の収集であっても、それが特定の候補者のための投票取りまとめ等の運動と密接に関連し、その報酬等の趣旨で金員が供与された場合には、公職選挙法上の選挙運動に該当し、買収罪が成立する。
問題の所在(論点)
特定の候補者のための選挙情報の収集および投票取りまとめ等の運動に対する報酬として金員を供与する行為が、公職選挙法における選挙運動(買収罪)に該当するか。
規範
公職選挙法上の「選挙運動」とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為をすることをいう。単なる情報の収集であっても、それが投票の取りまとめ等の運動と不可分一体のものとして行われ、その対価として金銭が授受される場合には、全体として選挙運動としての性質を有するものと解すべきである。
重要事実
被告人は、Aを通じてBに対し、現金5000円を供与した。この金員は、BがC候補のために選挙に関する情報を収集すること、および投票の取りまとめ等の運動を行うことに対する報酬等の趣旨で交付されたものであった。弁護人は、情報収集は選挙運動に当たらないとして無罪を主張した。
あてはめ
本件において、被告人が供与した5000円は、単なる情報収集の対価にとどまらず、特定のC候補のための「投票取りまとめ等の運動」に対する報酬としての性格を併せ持っている。このような投票取りまとめ行為は、特定の候補者の当選を目的とする直接的かつ有利な働きかけであり、選挙運動そのものに該当する。したがって、これと一体となった情報収集および金員供与も、全体として選挙運動に関する買収行為と評価される。
結論
被告人の行為は、選挙運動に関する報酬供与として公職選挙法違反(買収罪)を構成する。
実務上の射程
選挙運動の定義に関する基本判例の一つ。純粋な選挙情勢の調査・分析(政治活動)と、投票依頼に直結する活動の境界を示す。答案上は、行為の態様が「特定の候補者の当選目的」および「投票を得させるための有利な行為」に該当するかを判断する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和28(あ)5126 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動に対する報酬や投票取りまとめの報酬・費用として金員を供与する行為は、公職選挙法上の買収罪等に該当する。本件では、金員の供与が正当な趣旨で行われたとの弁護人の主張に対し、裁判所は確定事実に基づきこれを否定した。 第1 事案の概要:被告人は、選挙に際して他者に対し、1,000円および10,00…