関税法違反被告事件において、第一審が被告人から韓国海苔七、六〇〇枚を没収し、金二、〇四二、四二三円を追徴するとしたのに対して、被告人より控訴があつた場合、控訴審が第一審判決を破棄し、被告人から韓国海苔七、六〇〇枚および一、七〇〇枚と一、二〇七枚を没収し、金一、一九八、一六二円を追徴すると変更して言渡をしても、不利益変更禁止の規定に反しない。
刑訴法第四〇二条に違反しない事例。
刑訴法402条
判旨
被告人のみが控訴した事案において、第一審の没収・追徴の合算額や内容が控訴審で変更されたとしても、全体として第一審の刑より重くない場合には不利益変更禁止の原則に反しない。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した事件において、控訴審が第一審判決の没収対象物件の範囲を拡張する一方で追徴額を減額した場合、刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則に抵触するか。
規範
刑事訴訟法402条が定める不利益変更禁止の原則は、被告人が控訴した事件等について、原判決の刑より重い刑を言い渡すことができないとするものである。ここでいう「重い刑」か否かの判断は、主文に掲げられた刑の種類、量、付加刑(没収・追徴)を全体として比較し、被告人に不利益な変更がなされていないかという観点から判断される。
重要事実
被告人Aは第一審で、韓国海苔7,600枚の没収および金2,042,423円の追徴を言い渡された。被告人のみが控訴したところ、控訴審判決は、没収対象を韓国海苔7,600枚、1,700枚、1,207枚(計10,507枚)に増やす一方で、追徴額を金1,198,162円へと減額して言い渡した。これに対し被告人側は、不利益変更禁止の原則に反すると主張した。
あてはめ
不利益変更の有無は、刑全体を総合的に比較して決すべきである。本件では、第一審の没収(海苔7,600枚)および追徴(約204万円)に対し、控訴審では没収物件の数量は増加(計10,507枚)しているものの、付加刑の性質を併せ持つ追徴額が大幅に減額(約120万円)されている。このような変更は、第一審の判決と比較して全体として被告人に不利益な刑の変更とはいえず、実質的に刑が重くなったとは認められない。
結論
被告人のみが控訴した本件において、没収の範囲を広げ追徴額を減ずる変更をしても、全体として重い刑を科したものとはいえず、不利益変更禁止の原則に反しない。
実務上の射程
主文の刑の全体比較枠組みを示す判例。没収と追徴がトレードオフの関係にある場合など、主文の各項目が変動しても、総体として被告人の負担が増加していなければ402条違反とはならない。答案上は、刑の種類や量だけでなく、付加刑の合算や実質的負担を比較する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)1504 / 裁判年月日: 昭和30年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)は、判決主文の刑を原判決より不利益に変更することを禁ずるものであり、理由中の判断が不利益になることは許容される。また、抑留期間が不当に長いか否かは、証人の数や関係地域の広範性、事案の複雑性等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aおよび…