判旨
請願権の行使を目的とする行為であっても、管理者の意思に反して国会構内に立ち入る行為は建造物侵入罪を構成し、正当な請願行為とは認められない。
問題の所在(論点)
請願権の行使(憲法16条)を目的として、管理者の意思に反して国会構内へ立ち入る行為が、建造物侵入罪(刑法130条前段)を構成するか、あるいは正当な請願行為として許容されるか。
規範
憲法16条が保障する請願権の行使であっても、他人の権利を侵害し、または公共の福祉に反する態様での行使は許されない。刑法上の建造物侵入罪の成否においては、管理者の意思に反する立ち入りという態様がとられた場合、それが請願目的であっても正当な行為として違法性が阻却されるものではない。
重要事実
被疑者Aは、日米安全保障条約改定阻止を目的とする請願運動に際し、他の者と共謀の上、国会構内の管理者の意思に反して同構内に立ち入った。これに対し、A側は本件が憲法の保障する正当な請願行為であり、警察官による不当な弾圧こそが非難されるべきであるとして、建造物侵入罪の成立を否定し、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件における立ち入りは、国会構内の管理者の明示または黙示の意思に反して行われたものである。請願権の行使という目的があるにせよ、管理権者の意思を無視して構内に侵入する態様は、平穏な管理状態を害するものであり、法の許容する請願行為の枠外にある。したがって、本件行為は建造物侵入罪の構成要件に該当し、違法なものと評価される。
結論
本件行為は正当な請願行為とはいえず、建造物侵入罪を構成する。したがって、特別抗告は棄却される。
実務上の射程
表現の自由や請願権といった憲法上の基本権の行使が、刑罰法規に触れる態様で行われた場合の限界を示す。目的が正当であっても手段・態様において管理権を侵害する場合は、建造物侵入罪等の成立を妨げないとする実務上の規範として活用できる。
事件番号: 昭和33(し)16 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和33(し)20 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
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