捜査機関の請求に基づき裁判官のした捜索許可の裁判に対する不服申立と憲法三二条、三五条一項
憲法32条,憲法35条1項,刑訴法218条,刑訴法419条,刑訴法429条1項
判旨
捜査機関の請求に基づき裁判官が発した捜索許可状の裁判に対し、刑事訴訟法419条の抗告を申し立てることはできない。この解釈は、準抗告等の不服申立手段が他に存在しない場合であっても、憲法32条および35条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判官が発した捜索許可状の裁判に対し、刑事訴訟法419条に基づく抗告を申し立てることができるか。また、同裁判に対して準抗告も認められない場合に、抗告を否定することが憲法32条(裁判を受ける権利)や35条1項(令状主義)に違反しないか。
規範
刑事訴訟法上の「裁判所の決定」に対する抗告(419条)は、訴訟主体としての裁判所が行った裁判を対象とするものであり、裁判官がその資格において行った裁判(令状発付等)はこれに含まれない。また、適正な手続を経て発せられる令状による制約は、事後の不服申立手段が限定されていても憲法に違反しない。
重要事実
捜査機関が東京簡易裁判所の裁判官に対し、捜索許可状の請求を行った。これに対し裁判官は、裁判官としての資格において捜索許可の裁判(令状発付)を行った。これに対し、抗告人が刑事訴訟法419条に基づく抗告を申し立てたところ、原審はこれを不適法として棄却したため、抗告人が憲法違反等を理由に特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件における捜索許可は、裁判所という合議体または独任制の機関が行った「裁判所の決定」ではなく、裁判官が捜査上の必要性からその資格において行った裁判である。したがって、形式的に刑訴法419条の定める抗告の対象にはならない。また、憲法上の要請については、大法廷判決の趣旨に照らせば、令状発付手続において中立公正な裁判官が審査を行っている以上、事後の不服申立手段が法制化されていないとしても、直ちに裁判を受ける権利の侵害や令状主義の逸脱とはいえないと判断される。
事件番号: 昭和33(し)16 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
一 憲法第三五条は、捜索、押収については、その令状に、捜索する場所および押収すべき物を明示することを要求しているにとどまり、その令状が正当な理由に基いて発せられたことを明示することまでは要求していないものと解すべく、捜索差押許可状に被疑事件の罪名を、適用法条を示して記載することは憲法の要求するところではない。 二 捜索…
結論
捜査機関の請求により裁判官が行った捜索許可の裁判に対し、刑訴法419条の抗告は許されない。本件抗告を棄却した原決定の判断は正当であり、憲法にも違反しない。
実務上の射程
裁判官の発する令状に対する不服申立の可否に関する基本的枠組みを示す。答案上は、刑訴法429条1項各号(準抗告)に列挙されていない裁判官の裁判(捜索・押収令状の発付等)については、抗告も準抗告も認められないことを論証する際の根拠となる。
事件番号: 昭和33(し)20 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法35条が要求する捜索差押令状の明示事項は場所と物であり、罪名の記載にあたり適用法条まで示す必要はない。また、「一切の文書及び物件」との記載も、具体的な例示が付随し、被疑事件との関連性が客観的に明らかであれば、物の明示として有効である。 第1 事案の概要:地方公務員法違反の被疑事件に関し、捜索差…
事件番号: 昭和35(し)5 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請願権の行使を目的とする行為であっても、管理者の意思に反して国会構内に立ち入る行為は建造物侵入罪を構成し、正当な請願行為とは認められない。 第1 事案の概要:被疑者Aは、日米安全保障条約改定阻止を目的とする請願運動に際し、他の者と共謀の上、国会構内の管理者の意思に反して同構内に立ち入った。これに対…
事件番号: 昭和42(し)78 / 裁判年月日: 昭和44年12月3日 / 結論: 棄却
一 国税犯則取締法二条により収税官吏の請求に基づいて裁判官がした差押等の許可自体に対しては、準抗告その他独立の不服申立は許されない。このように解しても、憲法三二条に違反しない。 二 国税犯則取締法二条により収税官吏がした差押処分に対する不服申立は、行政事件訴訟に定める訴訟の方法によるべきであつて、これにつき刑訴法四三〇…
事件番号: 昭和26(し)109 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求の対象は、刑法193条ないし196条の罪(職権濫用罪等)について告訴・告発がなされた場合に限定される。公務員が調査要求を斥けたに過ぎない行為は、職権を濫用して他人の権利行使を妨害したものとはいえず、同罪の構成要件を欠くため付審判請求は不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、町長および…