一 国税犯則取締法二条により収税官吏の請求に基づいて裁判官がした差押等の許可自体に対しては、準抗告その他独立の不服申立は許されない。このように解しても、憲法三二条に違反しない。 二 国税犯則取締法二条により収税官吏がした差押処分に対する不服申立は、行政事件訴訟に定める訴訟の方法によるべきであつて、これにつき刑訴法四三〇条の準抗告の規定を準用すべきではない。
一 国税犯則取締法二条により裁判官がした差押等の許可自体に対する準抗告その他独立の不服申立の許否と憲法三二条 二 国税犯則取締法二条により収税官吏がした差押処分に対する不服申立方法
国税犯則取締法2条,刑訴法429条1項2号,刑訴法430条,憲法32条,行政事件訴訟法1条
判旨
国税犯則取締法に基づく裁判官の差押許可および収税官吏の差押処分は、刑事手続ではなく行政手続の性質を有する。したがって、刑事訴訟法上の不服申立手続(準抗告)を準用することはできず、行政事件訴訟法によるべきである。
問題の所在(論点)
国税犯則取締法に基づく裁判官の差押許可および収税官吏の差押処分に対し、刑事訴訟法429条または430条の規定を準用して準抗告を申し立てることができるか。
規範
1. 裁判官による差押の許可は、収税官吏の強制処分を適法に行わしめるための職務上の独立した事前審査であり、国家機関相互間の内部的行為にすぎない。明文の規定がない限り、刑事訴訟法429条の準用は認められない。 2. 国税犯則事件の調査手続は、行政措置(通告処分)で終局し得ることや行政事件訴訟による救済が前提とされていることから、その本質は刑事手続ではなく行政手続である。したがって、これに刑事訴訟法430条を準用することはできない。
重要事実
申立人は物品税法違反嫌疑事件につき、簡易裁判所裁判官が発付した捜索差押許可状に基づく収税官吏の差押処分を受けた。申立人は、裁判官の許可裁判および収税官吏の差押処分の取消を求め、刑事訴訟法429条および430条を準用して準抗告を申し立てた。原審は準抗告を適法とした上で棄却したため、申立人が抗告した事案である。
事件番号: 昭和54(し)31 / 裁判年月日: 昭和54年4月3日 / 結論: 棄却
刑訴法四三〇条二項にいう「職務執行地」とは、不服のある処分の行われた地をいう。
あてはめ
1. 差押許可について:裁判官の許可は、収税官吏に対し強制処分の実施を命ずるものでも、処分を受ける者に直接効力を及ぼすものでもない内部的行為である。独立の不服申立規定がない以上、刑事訴訟法429条の準用は否定される。 2. 差押処分について:国税犯則調査は刑事手続と関連性はあるものの、通告処分による終局が予定される等、現行法制上は行政手続に分類される。不服申立は行政事件訴訟法によるべきであり、刑事訴訟法430条の準用は相当ではない。 3. 権利救済について:行政訴訟において許可自体の違法を主張して処分の取消を求めることが可能である以上、憲法32条(裁判を受ける権利)には違反しない。
結論
国税犯則取締法に基づく許可および処分に対し、刑事訴訟法上の準抗告を申し立てることは不適法である。
実務上の射程
刑事手続に類似する行政上の強制調査であっても、その法的性質が行政手続に属する場合には、刑事訴訟法上の不服申立は認められない。強制処分の適法性は、後続の行政訴訟の中で争うべきであるとする枠組みを示す。なお、本判決後の国税通則法(旧国税犯則取締法を統合)下の処分についても、同様の法理が適用される。
事件番号: 昭和63(し)63 / 裁判年月日: 平成元年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査機関の請求に基づき裁判官が発した捜索許可状の裁判に対し、刑事訴訟法419条の抗告を申し立てることはできない。この解釈は、準抗告等の不服申立手段が他に存在しない場合であっても、憲法32条および35条1項に違反しない。 第1 事案の概要:捜査機関が東京簡易裁判所の裁判官に対し、捜索許可状の請求を行…
事件番号: 昭和43(し)100 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。 二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない…
事件番号: 昭和43(し)101 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法430条に基づく不服申立てを受けた裁判所は、差押えの必要性の有無についても審査することができる。差押えの必要性は、犯罪の態様や証拠としての価値、被差押者の不利益等を総合考慮し、明らかに必要がないと認められる場合には否定される。 第1 事案の概要:検察官等が行った差押処分に対し、刑事訴訟法…
事件番号: 昭和35(し)5 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請願権の行使を目的とする行為であっても、管理者の意思に反して国会構内に立ち入る行為は建造物侵入罪を構成し、正当な請願行為とは認められない。 第1 事案の概要:被疑者Aは、日米安全保障条約改定阻止を目的とする請願運動に際し、他の者と共謀の上、国会構内の管理者の意思に反して同構内に立ち入った。これに対…