判旨
刑事訴訟法430条に基づく不服申立てを受けた裁判所は、差押えの必要性の有無についても審査することができる。差押えの必要性は、犯罪の態様や証拠としての価値、被差押者の不利益等を総合考慮し、明らかに必要がないと認められる場合には否定される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法430条1項に基づき差押処分の取消しを求める準抗告において、裁判所は差押えの「必要性」について審査することができるか。また、その判断基準はいかなるものか。
規範
差押えが「証拠物又は没収すべき物と思料するもの」に該当する場合であっても、差押えの必要性については審査の対象となる。具体的には、①犯罪の態様・軽重、②差押物の証拠としての価値・重要性、③差押物が隠滅毀損されるおそれの有無、④差押えによって受ける被差押者の不利益の程度、その他諸般の事情を総合考慮すべきである。これらの事情に照らし、明らかに差押えの必要がないと認められるときは、差押えは許されない。
重要事実
検察官等が行った差押処分に対し、刑事訴訟法430条1項に基づき準抗告が申し立てられた事案である。検察官は、裁判所は差押えの必要性(捜査の必要性)について審査権限を有しない旨を主張して抗告した。また、本件では事件の検察官送致後に司法警察員も抗告を申し立てている。
あてはめ
刑事訴訟法218条1項が「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」に差押えを認めている以上、同法430条の不服申立てを受けた裁判所は、必要性の有無を審査できる。本件においても、証拠物該当性のみならず、犯罪の軽重や差押えによる不利益等を比較衡量すべきであり、原審がこれらの必要性について判断の対象としたことに違法はない。
結論
裁判所は差押えの必要性について審査することができ、諸般の事情に照らし明らかに必要がないと認められる場合には、当該処分を取り消すことができる。
事件番号: 昭和43(し)100 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。 二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない…
実務上の射程
準抗告(430条)や令状審査において、単に「証拠物該当性」という形式的要件だけでなく、「必要性(比例原則)」という実質的要件を考慮すべきことを示した重要判例である。答案では、捜査の相当性や比例原則を論じる際の規範として、掲げられた要素(犯罪の態様、重要性、不利益等)を引用してあてはめるのが適切である。
事件番号: 昭和54(し)31 / 裁判年月日: 昭和54年4月3日 / 結論: 棄却
刑訴法四三〇条二項にいう「職務執行地」とは、不服のある処分の行われた地をいう。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
事件番号: 平成4(し)64 / 裁判年月日: 平成4年10月13日 / 結論: 棄却
差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
事件番号: 昭和42(し)78 / 裁判年月日: 昭和44年12月3日 / 結論: 棄却
一 国税犯則取締法二条により収税官吏の請求に基づいて裁判官がした差押等の許可自体に対しては、準抗告その他独立の不服申立は許されない。このように解しても、憲法三二条に違反しない。 二 国税犯則取締法二条により収税官吏がした差押処分に対する不服申立は、行政事件訴訟に定める訴訟の方法によるべきであつて、これにつき刑訴法四三〇…