判旨
付審判請求の対象は、刑法193条ないし196条の罪(職権濫用罪等)について告訴・告発がなされた場合に限定される。公務員が調査要求を斥けたに過ぎない行為は、職権を濫用して他人の権利行使を妨害したものとはいえず、同罪の構成要件を欠くため付審判請求は不適法となる。
問題の所在(論点)
付審判請求の対象となる罪(刑訴法262条1項)の範囲と、単なる調査要求の拒絶が刑法193条の職権濫用罪の構成要件に該当するか。
規範
刑訴法262条による審判請求(付審判請求)は、刑法193条ないし196条の罪、すなわち公務員職権濫用罪、特別公務員職権濫用罪、特別公務員暴行陵虐罪、特別公務員暴行陵虐致死傷罪に該当する罪について告訴・告発した者が、検察官の不起訴処分の通知を受けた場合にのみ認められる。また、刑法193条の職権濫用罪が成立するためには、公務員がその職権を濫用して、積極的に他人の権利行使を妨害し、または義務のないことを行わせることが必要である。
重要事実
抗告人は、町長および町議会議長が、町助役らの業務上横領等の被疑事件について調査義務を尽くさず、また戦災者への配給手続等において職責を全うしなかったとして、刑法193条の職権濫用罪で告訴した。検察官による不起訴処分に対し、抗告人は刑訴法262条に基づき付審判請求を行ったが、原決定は、本件告訴内容が職権濫用罪等のいずれにも該当せず、単に調査要求を斥けたに過ぎないとして請求を棄却した。これに対し、抗告人が憲法違反等を理由に特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件における公務員の行為は、抗告人による調査要求を斥けたという不作為に類する内容にとどまる。これは、刑法193条が予定する「職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」行為には該当しない。したがって、本件告訴は付審判請求の対象となる刑法193条ないし196条の罪についてなされたものとは認められず、付審判請求の適法な前提を欠いている。また、原決定は通常抗告が可能な決定であり、特別抗告の要件も満たさない。
結論
本件付審判請求は不適法であり、原決定を維持し本件特別抗告を棄却する。
事件番号: 昭和26(し)71 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
一 刑訴第二六六条第一号により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。 二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条による抗告をすることができる。
実務上の射程
付審判制度の対象犯罪が限定列挙(刑法193条〜196条)であることを確認する際の実務的根拠となる。答案上は、告訴事実がこれらの限定された犯罪類型に形式的・実質的に該当するかを検討する際の導入として活用できる。特に「単なる不作為や不親切な対応」が職権濫用罪の構成要件に該当しないことを示す文脈で有用である。
事件番号: 昭和29(し)53 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求を棄却する決定は、刑事訴訟法266条1号に基づく決定であり、これに対しては同法419条等により高等裁判所へ通常抗告をすべきである。したがって、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、不服申立権の適法な行使にあたらず認められない。 第1 事案の概要:付審判請求がなされた事案において、地…
事件番号: 昭和63(し)76 / 裁判年月日: 平成元年3月14日 / 結論: 棄却
警察官が職務として行つたものであつても、終始何人に対しても警察官でないことを装つてした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行つたものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
事件番号: 昭和45(し)83 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件において、第一審が確定した事実関係に基づき公務員職権濫用罪が成立しないと判断したことは正当であり、憲法違反等の主張は特別抗告の適法な理由にならない。 第1 事案の概要:本件は付審判請求事件である。第一審において、被請求人らによる公務員職権濫用罪の成立を否定する決定がなされた。これに対…
事件番号: 昭和57(し)26 / 裁判年月日: 昭和57年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告(刑訴法433条)は、対象となる決定又は命令に対し、法上他に不服を申し立てることができない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:申立人は、原決定に対し、刑訴法419条および421条に基づき、高等裁判所に対して通常の抗告をすることが可能な状況にあった。しかし、申立人は通…