一 刑訴第二六六条第一号により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。 二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条による抗告をすることができる。
一 いわゆる審判請求を棄却した決定の性質 二 審判請求棄却決定に対する不服申立の方法
刑訴法262条1項,刑訴法266条1号,刑訴法269条,刑訴法419条,刑訴法420条1項
判旨
付随的裁判(審判請求を棄却する決定)は、刑訴法420条1項にいう「訴訟手続に関し判決前にした決定」には当たらず、通常抗告の対象となるため、直接特別抗告を申し立てることは不適法である。
問題の所在(論点)
刑訴法266条1号による審判請求棄却決定が、同法420条1項にいう「訴訟手続に関し判決前にした決定」に該当し抗告が制限されるか。また、同決定に対して直接特別抗告をすることが許されるか。
規範
刑訴法420条1項の「訴訟手続に関し判決前にした決定」とは、終局の判決を目標とする訴訟手続の前提としてなされる個々の決定を指す。これらの決定は、終局判決に対する上訴により救済が可能なため原則として独立の抗告を許さないが、これに当たらない決定については、不服を許さない特別の規定がない限り、同法419条・421条により通常抗告が可能である。したがって、通常抗告が可能な決定に対し直接特別抗告(433条)をすることは許されない。
重要事実
申立人は、検察官等による職権濫用逮捕監禁罪等の事実につき、裁判所に対し刑訴法262条に基づく審判請求(いわゆる付記決定の請求)を行った。これに対し地方裁判所は、犯罪の嫌疑がないこと、または告訴を経ていないことを理由に、刑訴法266条1号に基づき審判請求を棄却する決定をした。申立人は、この棄却決定に対し、通常の抗告を経ることなく、最高裁判所に直接特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和30(し)22 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審判請求棄却決定に対しては、刑事訴訟法421条により常に高等裁判所への通常抗告が可能であるため、これを行わずになされた最高裁判所への特別抗告は、刑事訴訟法433条の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:公務員職権濫用被疑事件についてなされた審判請求に対し、富山地方裁判所が審判請求棄却決定を下…
あてはめ
審判請求を棄却する決定は、公訴を提起しないことを是認する決定であり、有罪・無罪等の「終局判決を目標とする手続」の一環としてなされるものではない。そのため、刑訴法420条1項の「訴訟手続に関し判決前にした決定」には当たらない。また、同決定に不服を許さないとする特別の規定も存在しない。したがって、当該決定に対しては同法419条・421条に基づく通常抗告が可能である。本件において、申立人はこの通常抗告の手順を履践していないため、不服申立の道がある決定に対しなされた特別抗告として、433条の要件を欠く。
結論
本件審判請求棄却決定に対しては通常抗告が可能であり、それを経ずに直接申し立てられた特別抗告は不適法として棄却される。
実務上の射程
付随的・特別の手続における決定が「訴訟手続に関し判決前にした決定」に含まれるか否かを判断する際の基準を示す。審判請求棄却決定に対する不服申立方法が通常抗告(419条)であることを確定させた点で実務上重要であり、答案上も不服申立構造を論じる際に応用できる。
事件番号: 昭和26(し)109 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求の対象は、刑法193条ないし196条の罪(職権濫用罪等)について告訴・告発がなされた場合に限定される。公務員が調査要求を斥けたに過ぎない行為は、職権を濫用して他人の権利行使を妨害したものとはいえず、同罪の構成要件を欠くため付審判請求は不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、町長および…
事件番号: 昭和29(し)53 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求を棄却する決定は、刑事訴訟法266条1号に基づく決定であり、これに対しては同法419条等により高等裁判所へ通常抗告をすべきである。したがって、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、不服申立権の適法な行使にあたらず認められない。 第1 事案の概要:付審判請求がなされた事案において、地…
事件番号: 昭和30(し)7 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的訴追(刑訴法262条1項)の審判請求を棄却した決定に対しては、通常の抗告が可能であるため、これを行わずに直接最高裁判所へ申し立てる特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大阪拘置所長による公務員職権濫用等の事実について、刑訴法262条1項に基づき審判請求を行った。これに対し、大…
事件番号: 昭和30(し)26 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的裁判(付記決定等)に対する不服申立てについて、刑訴法433条1項にいう「抗告をすることができない裁判」とは、その裁判に対して通常の抗告方法が全く認められていない場合を指す。したがって、通常抗告が可能な裁判に対し、その手続を経ずに直接特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:…