判旨
審判請求棄却決定に対しては、刑事訴訟法421条により常に高等裁判所への通常抗告が可能であるため、これを行わずになされた最高裁判所への特別抗告は、刑事訴訟法433条の要件を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
審判請求を棄却する決定に対し、通常抗告を経ずに直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることの適否(刑訴法433条1項の不服申立対象性)。
規範
最高裁判所への特別抗告(刑訴法433条1項)は、同法により抗告をすることができない決定及び命令に対してのみ認められる補足的な不服申立手段である。したがって、別途、高等裁判所への通常抗告(刑訴法421条)が許容されている裁判に対しては、直接特別抗告を申し立てることはできない。
重要事実
公務員職権濫用被疑事件についてなされた審判請求に対し、富山地方裁判所が審判請求棄却決定を下した。請求人(抗告人)は、この決定に対し、管轄の高等裁判所へ通常抗告をすることなく、直接最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
審判請求棄却の決定は、刑訴法421条の規定に基づき、時機を問わず高等裁判所に通常の抗告をすることが可能である。本件において抗告人は、この通常抗告の手続きを履践していない。刑訴法433条は、他の不服申立手段がない場合に限定して最高裁判所への特別抗告を認める趣旨であるから、通常抗告が可能な本件決定は、特別抗告の対象となる「抗告をすることができない決定」には該当しない。
結論
本件特別抗告は、刑訴法433条の要件を具備しない不適法なものであるため、棄却されるべきである。
実務上の射程
準起訴手続き(付審判手続き)における裁判所の決定に対する不服申立構造を明示したものである。実務上、地裁による審判請求棄却決定に対しては、まず高裁への通常抗告を行う必要があり、これを超越して最高裁に判断を求めることはできないという手続き的序列を遵守させる意義がある。
事件番号: 昭和26(し)71 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
一 刑訴第二六六条第一号により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。 二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条による抗告をすることができる。
事件番号: 昭和30(し)26 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的裁判(付記決定等)に対する不服申立てについて、刑訴法433条1項にいう「抗告をすることができない裁判」とは、その裁判に対して通常の抗告方法が全く認められていない場合を指す。したがって、通常抗告が可能な裁判に対し、その手続を経ずに直接特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:…
事件番号: 昭和50(し)38 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく最高裁判所への特別抗告は、対象となる決定等に対して他に不服申立ての手段がない場合に限り許容される。高等裁判所への通常抗告が可能な決定に対し、これを経ずに直接最高裁判所へ抗告することは不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、原決定(詳細は判決文からは不明)に対し、刑事訴…
事件番号: 昭和30(し)7 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的訴追(刑訴法262条1項)の審判請求を棄却した決定に対しては、通常の抗告が可能であるため、これを行わずに直接最高裁判所へ申し立てる特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大阪拘置所長による公務員職権濫用等の事実について、刑訴法262条1項に基づき審判請求を行った。これに対し、大…
事件番号: 昭和42(し)40 / 裁判年月日: 昭和42年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的申判請求(付記:検察審査会法上の用語との混同を避けるため、通常は「付審判請求」と称される)を棄却する決定に対して、直接最高裁判所に特別抗告を申し立てることは、刑事訴訟法433条の要件を備えず不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、旭川警察署の氏名不詳の警察官による特別公務員暴行の事実につ…