判旨
付随的裁判(付記決定等)に対する不服申立てについて、刑訴法433条1項にいう「抗告をすることができない裁判」とは、その裁判に対して通常の抗告方法が全く認められていない場合を指す。したがって、通常抗告が可能な裁判に対し、その手続を経ずに直接特別抗告を申し立てることは不適法である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法262条1項に基づく請求(付記決定の請求)を棄却する決定に対し、通常の抗告を経ずに直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることが、同法433条1項の要件を満たすか。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づき、最高裁判所に特別抗告を申し立てることができるのは、同法により「抗告をすることができない裁判」に限られる。これは、法律上その裁判に対して通常の抗告(即時抗告または通常抗告)による不服申立ての道が一切閉ざされている場合を意味する。したがって、通常の抗告が認められている裁判について、その手続を経ることなく直接最高裁判所に不服を申し立てることは、同条の要件を欠き不適法となる。
重要事実
申立人は、公務員職権濫用告訴事件に関し、刑事訴訟法262条1項の規定に基づき裁判所の審判に付すことを請求(付記決定の請求)したが、鹿児島地方裁判所は昭和30年5月27日にこの請求を棄却する決定を下した。申立人は、この請求棄却決定に対し、通常の抗告手続を履践することなく、直接最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において、地方裁判所がなした請求棄却の決定は、法律上通常の抗告が可能な裁判である。それにもかかわらず、申立人は右決定に対し通常の抗告を申し立てていない。刑訴法433条の「抗告をすることができない裁判」とは、他に不服申立手段がない裁判を指すところ、本件決定はこれに該当しない。したがって、適法な不服申立手続を迂回して直接なされた本件申立ては、同条の定める要件を具備していないといえる。
結論
本件特別抗告は刑訴法433条1項の要件を欠き不適法であるため、同法426条1項に基づき棄却すべきである。
事件番号: 昭和30(し)7 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的訴追(刑訴法262条1項)の審判請求を棄却した決定に対しては、通常の抗告が可能であるため、これを行わずに直接最高裁判所へ申し立てる特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大阪拘置所長による公務員職権濫用等の事実について、刑訴法262条1項に基づき審判請求を行った。これに対し、大…
実務上の射程
本判決は、不服申立構造における「特別抗告の補充性」を明示したものである。答案作成上は、裁判所の決定等に対する不服申立ての可否が問われる際、まずは通常の抗告の可否を検討し、それが認められる場合には直接の特別抗告は許されないという手続的ルールの論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(し)22 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審判請求棄却決定に対しては、刑事訴訟法421条により常に高等裁判所への通常抗告が可能であるため、これを行わずになされた最高裁判所への特別抗告は、刑事訴訟法433条の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:公務員職権濫用被疑事件についてなされた審判請求に対し、富山地方裁判所が審判請求棄却決定を下…
事件番号: 昭和29(し)57 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求を棄却する地方裁判所の決定に対し、直接最高裁判所へ特別抗告をすることはできず、高等裁判所への通常抗告によるべきである。 第1 事案の概要:本件において、地方裁判所は刑訴法262条に基づく付審判請求に対し、同法266条1号により当該請求を棄却する決定を下した。これに対し、抗告人は高等裁判所…
事件番号: 昭和30(し)19 / 裁判年月日: 昭和30年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求を棄却する決定は、刑事訴訟法421条に基づく通常抗告の対象となるため、これに対し直接特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:付審判請求を受けた裁判所が、刑事訴訟法266条1号により当該請求を棄却する決定を行った。これに対し、申立人(抗告人)は通常抗告の手続きを経ること…
事件番号: 昭和26(し)71 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
一 刑訴第二六六条第一号により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。 二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条による抗告をすることができる。