所論「オツトリ嫁」なる風習がいまなお存在しているとしても、右風習が、所論の如く、婚姻に同意しない婦女を婚姻の目的で略取し強いて姦淫する内容のものである限り、違法性を有することは、極めて明白である。
「オツトリ嫁」なる風習の違法性。
刑法177条,刑法181条
判旨
婚姻に同意しない婦女を婚姻目的で略取し、強いて姦淫する行為は、たとえ「オツトリ嫁」という風習に基づくものであっても、その違法性は極めて明白である。
問題の所在(論点)
婚姻を目的とした略取および強姦行為について、地域の習俗(「オツトリ嫁」)の存在を理由に、違法性が阻却されるか、あるいは法令違反として許容されるか。
規範
特定の社会的習俗や風習に基づく行為であっても、個人の意思に反して身体の自由を拘束し、性的自由を著しく侵害する行為は、法秩序全体に照らして正当化されず、違法性を有する。
重要事実
被告人が、婚姻に同意していない婦女に対し、婚姻の目的で略取(拉致)を行い、さらに強いて姦淫(性的暴行)に及んだ。被告人側は、当時の地域社会に残存していたとされる、無理やり妻にする「オツトリ嫁」という風習に基づく正当な行為である旨を主張した。
あてはめ
たとえ被告人が主張するような風習が実在していたとしても、その内容は婚姻に同意しない婦女の意思を完全に無視し、略取・強姦という重大な権利侵害を伴うものである。このような個人の尊厳を蹂躙する行為が、単なる風習を理由に法的に許容される余地はなく、その違法性は極めて明白であると評価される。
結論
被告人の行為は、風習の有無にかかわらず違法であり、有罪を免れない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
文化的な背景や特殊な慣習を理由とする違法性阻却の主張を明確に否定した判例である。現代の司法試験においては、強制性交等罪(不同意性交等罪)や略取罪の構成要件に該当する行為が、文化的背景によって「正当な業務」や「正当行為(刑法35条)」となり得ないことを示す材料として機能する。
事件番号: 昭和35(あ)242 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 棄却
婦女を強姦する目的で暴行を加えその婦女を死亡させ、その直後姦淫したときは、姦淫行為が婦女の死亡後であるとしてもこれを包括して強姦致死罪と解すべきである。