死亡の結果につき故意を有し、暴行を以つて婦女を姦淫し因つて死に致した所為は強姦致死罪および殺人の罪名に触れるものとする。
殺意ある者が犯した強姦致死の擬律
刑法177条,刑法181条,刑法199条,刑法54条1項
判旨
強姦致死罪と殺人罪が成立する場合において、両者が一個の行為によって行われたときは、刑法54条1項前段の観念的競合として処理すべきである。また、死刑制度は憲法に違反しないとする従来の判例を維持する。
問題の所在(論点)
1.一個の行為によって強姦致死罪と殺人罪が引き起こされた場合、いかなる罪数関係となるか。 2.死刑制度は憲法に違反するか。
規範
一個の行為が数個の罪名に触れる場合(観念的競合)については、刑法54条1項前段に基づき、その最も重い刑をもって処断する。また、死刑制度の合憲性については、過去の当裁判所大法廷判決の趣旨に照らし、憲法に違反しない。
重要事実
被告人が強姦致死の事実および殺人の事実を犯した事案である。第一審判決は、被告人に殺意があったことを認定した上で、強姦致死罪(刑法181条、177条)と殺人罪(刑法199条)の成立を認めた。弁護側は、死刑の違憲性や事実誤認、量刑不当を理由に上告した。
あてはめ
1.罪数関係について:第一審および原審は、本件の強姦致死と殺人の行為が「一個の行為にして数個の罪名に触れる場合」に該当すると判断した。最高裁もこの法律判断を正当として是認し、刑法54条1項前段(観念的競合)を適用して重い殺人罪の刑で処断すべきとした。 2.死刑の合憲性について:昭和22年および昭和23年の大法廷判決等の先例を引用し、死刑が憲法違反ではないことは既に確定した判例であるとした。
結論
被告人の行為は、強姦致死罪と殺人罪の観念的競合となり、最も重い殺人罪の刑で処断される。また、死刑制度は合憲であり、上告は棄却される。
実務上の射程
強姦致死の結果が発生している場面で、さらに殺意をもって殺害行為に及んだ際、それが時間的・空間的に密接した「一個の行為」と評価される場合には、観念的競合として処理されることを示した事例である。実務上は、行為の単一性・連続性を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和54(あ)912 / 裁判年月日: 平成2年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、本件のごとき重大な刑責を負う事案においては死刑の選択はやむをえないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は約2年の間に3回にわたり、夜間帰宅途中の婦女を襲って強姦した。その際、当時19歳の女性2名を殺害し、うち1名の死体を山林に遺棄した。弁護人は、死刑制度…
事件番号: 昭和23(れ)584 / 裁判年月日: 昭和23年11月16日 / 結論: 棄却
一 假りに警察の取調が「脅迫強問」にょつて爲されたとしても、その取調の結果を記載した書類は、原判決において證據として採用されてはいないのであるから、そのことは適法な上告理由とはならない。 二 およそ婦女を姦淫する爲の手段として用いた暴行の結果その婦女を死亡させたときは、姦淫行爲の既遂たると未遂たるとを問わず、強姦致死罪…
事件番号: 昭和32(あ)3259 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
婦女を強姦した上所持品を強取しようと決意し、まずその前頸部を扼して失神させ被害者の自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終つた後即時犯行の発覚をおそれて殺意を生じ殺害した場合は、刑法第二四〇条後段、第二四一条前段、第二四三条、第五四条第一項前段を適用すべきものである