婦女を強姦する目的で暴行を加えその婦女を死亡させ、その直後姦淫したときは、姦淫行為が婦女の死亡後であるとしてもこれを包括して強姦致死罪と解すべきである。
強姦の目的で暴行を加え婦女を死亡させた後の姦淫行為。
刑法181条
判旨
強姦の目的で暴行・脅迫を加え、その過程で被害者を殺害した直後に姦淫した場合であっても、一連の行為を包括して強姦致死罪が成立する。
問題の所在(論点)
強姦の手段たる暴行によって被害者を殺害し、その死後に姦淫を行った場合、強姦致死罪が成立するか。あるいは死体等領得罪や殺人罪等の別罪が成立するにとどまるか。
規範
強姦の目的を遂げるための手段として暴行・脅迫を用い、その結果として被害者を死に至らしめたのであれば、たとえ実際の姦淫行為が殺害の直後になされたものであったとしても、これを包括して強姦致死罪(刑法181条、現:強制性交等致死罪)と解すべきである。
重要事実
被告人は被害者を強姦しようと決意し、ナイフで脅迫して連行したが、被害者が大声を出したため発覚を恐れ、かつ殺害した上で情欲を遂げようと考えた。被告人は被害者の頸部を緊扼し、さらに確実に死に至らしめるため馬乗りになって手拭いで絞殺した。その直後、死亡した被害者に対し姦淫行為を及ぼした。
事件番号: 昭和23(れ)584 / 裁判年月日: 昭和23年11月16日 / 結論: 棄却
一 假りに警察の取調が「脅迫強問」にょつて爲されたとしても、その取調の結果を記載した書類は、原判決において證據として採用されてはいないのであるから、そのことは適法な上告理由とはならない。 二 およそ婦女を姦淫する爲の手段として用いた暴行の結果その婦女を死亡させたときは、姦淫行爲の既遂たると未遂たるとを問わず、強姦致死罪…
あてはめ
本件において、被告人は当初から強姦の目的を有しており、その目的を遂げるための手段として一連の暴行・絞扼を行っている。犯行の途中で「殺害した上で情欲を遂げよう」と殺意を生じさせて死に至らしめているが、その直後に姦淫を遂げている以上、暴行から姦淫に至るまでの一連の行為は、強姦の機会に行われたものと評価できる。したがって、姦淫時に被害者が死亡していたとしても、包括的に強姦致死罪の成立を認めるのが相当である。
結論
被告人の行為は強姦致死罪を構成する。上告棄却。
実務上の射程
強姦(強制性交等)の手段としての暴行が殺意に基づく殺人行為を兼ねる場合や、死後に姦淫に至った場合でも、強姦の目的・機会との近接性があれば本罪が成立することを示した。答案上は、致死の結果に殺意がある場合(強姦殺人)も本罪に含まれるという理屈の補強、および「死後の姦淫」が強姦の結果的加重犯の範囲に含まれるか否かの判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)1573 / 裁判年月日: 昭和36年1月25日 / 結論: 棄却
被告人らが被害者を強いて姦淫すべく、下半身を裸にして急激な寒冷にさらしたことを含む暴行行為により、異常体質者の被害者をシヨツク状態に陥らせ、且つ、被害者をすでに死亡したものと誤信して田圃に背負い出し放置して凍えさせた行動により相合して被害者を死に致したときは、包括的に一個の強姦致死罪が成立する。