原審が量刑当否の判断に当り考慮した被告人の本件犯行の動機態様、罪質、被害の結果、犯罪後の情状、その他被告人の年齢、経歴、境遇等の一切の事情の如きは元来罪となるべき事実ではないから、証拠によりこれを認める場合においても憲法第三八条第三項による制限を受けず被告人の自白のみにより認定しても差支えないと解すべきである(昭和二九年一二月二四日第二小法廷決定、刑事八巻一三号二三四三頁参照)。
量刑当否の判断に当り考慮した事情の認定と憲法第三八条第三項。
憲法38条3項,刑訴法319条2項
判旨
憲法38条3項が自白のみによる有罪判決を禁止するのは、罪となるべき事実の認定に関するものである。量刑の基礎となる情状事実はこれに含まれないため、被告人の自白のみによって認定しても憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
量刑の基礎となる事実(情状事実)の認定について、憲法38条3項(自白の補強証拠の必要性)の適用があるか。すなわち、情状事実を被告人の自白のみで認定できるかが問題となる。
規範
憲法38条3項が自白を唯一の証拠とすることを禁止するのは、本来「罪となるべき事実」そのものの認定に関するものである。したがって、量刑の判断にあたり考慮されるべき犯行の動機、態様、罪質、被害結果、犯罪後の情状、被告人の年齢、経歴、境遇等の一切の事情は、証拠により認める場合であっても、被告人の自白のみにより認定することが許される。
重要事実
被告人が特定の犯罪事実について起訴された事案において、原審(控訴審)は量刑の当否を判断するにあたり、被告人の犯行の動機、態様、被害の結果、犯罪後の情状、さらには被告人の年齢や経歴、境遇といった諸事情を考慮した。弁護人は、これらの量刑事情が実質的に被告人の自白のみを証拠として認定されており、自白のみを唯一の証拠として有罪(または量刑の重罰化)を課すことは憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法38条3項が補強証拠を要求するのは、事実に反する自白によって冤罪が生じることを防ぐためであり、その対象は刑罰権の存否に直接関わる「罪となるべき事実」に限定される。本件において、原審が考慮した犯行の動機や被告人の経歴等の事情は、構成要件に該当する事実そのものではなく、量刑の適正を図るための付随的事象である。これらは「罪となるべき事実」にはあたらないため、補強証拠は不要である。また、実際には原審は記録中の各証拠を総合して認定しており、自白のみに依拠したわけでもない。
結論
量刑の基礎となる事実は「罪となるべき事実」ではないため、被告人の自白のみによって認定しても憲法38条3項には違反しない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項(補強法則)の解釈として、補強証拠が必要な範囲を「罪となるべき事実」(主文において有罪の根拠となる構成要件的事実、違法性・責任を基礎付ける事実)に限定する際に引用する。情状事実や、前科・経歴などの犯意以外の主観的要素の立証において、自白以外の証拠が乏しい場合の理論的根拠となる。
事件番号: 昭和30(あ)324 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項に基づき、被告人の自白のみで有罪とすることはできないが、自白のほかに補強証拠を総合して犯罪事実が認定されている場合には、適法に有罪判決を下すことができる。 第1 事案の概要:被告人が自白を強要されたと主張し、自白のみによる処罰(憲法38条3項違反)等を理由に上告した事案。記録上、自白…