所論昭和三四年二月乃至四月の各月に製造場より移出にかかる本件ピアノの物品税逋脱罪の既遂時期は、夫々翌々月末日の経過した時、即ち、同年五月一日、六月一日、七月一日である(昭和三一年(あ)第四七号同年一二月六日第一小法廷決定、集一〇巻一二号一五八三頁参照)。
物品税逋脱罪の既遂時期。
旧物品税法(昭和15年法律40号)10条,旧物品税法(昭和15年法律40行)8条,旧物品税法(昭和15年法律40号)18条1項2号,旧国税徴収法(明治30年法律21号)6条
判旨
物品税逋脱罪の既遂時期は、納税申告書の提出期限である移出月の翌々月末日が経過した時である。したがって、確定判決以前に商品の移出があった場合でも、その後の申告期限経過により既遂に達した罪は、確定判決後の犯罪となる。
問題の所在(論点)
製造場からの移出によって成立する物品税逋脱罪において、その「既遂時期」はいつか。また、移出行為が確定判決前であっても、既遂時期が確定判決後であれば「確定判決後の犯罪」として併合罪(刑法45条後段)の適用を受けないか。
規範
物品税逋脱罪の既遂時期は、納税義務が確定し、かつその納期限(納税申告書の提出期限)が徒過した時点をもって判断すべきである。具体的には、課税対象物品を製造場から移出した月の翌々月末日の経過した時が既遂時期となる。
重要事実
被告人は昭和34年2月から4月にかけて、製造場よりピアノを移出し、物品税を逋脱した。被告人には別の罪について確定判決が存在していたが、本件各罪の移出行為自体はその確定判決前に行われていた。しかし、当該物品税の納税申告期限(移出月の翌々月末日)は、いずれも確定判決後の日付(同年5月1日、6月1日、7月1日)であった。
あてはめ
物品税逋脱罪は申告・納付の懈怠によって完成するため、移出行為時ではなく申告期限の徒過時を既遂時期と解する。本件では、昭和34年2月、3月、4月の各移出にかかる罪の既遂時期は、それぞれ翌々月末日を経過した同年5月1日、6月1日、7月1日となる。これらの時期は被告人の別罪にかかる確定判決後であるため、本件各罪は確定判決後の犯罪であるといえる。
結論
物品税逋脱罪の既遂時期は移出月の翌々月末日の経過時であり、本件各罪は確定判決後の犯罪として、刑法45条後段の併合罪関係には立たない。
実務上の射程
租税逋脱罪全般において、行為(移出や所得発生)と既遂(申告期限の徒過)に時間的ずれが生じる場合の既遂時期の判断基準を示す。刑法45条後段の「確定判決」との前後関係を判断する際、実行行為時ではなく既遂時を基準とする実務上の準則として重要である。
事件番号: 昭和31(あ)1501 / 裁判年月日: 昭和33年8月12日 / 結論: 棄却
パチンコ機械の物品税額は、現行法上現実に移出販売した価格の一二〇分の一〇〇に相当する価格に、一〇〇分の二〇を乗じた価額である。
事件番号: 昭和30(あ)3712 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
一 物品税または取引高税を逋脱する目的で、製造場から製品を移出販売しその代金を受領しながら、これについては所轄税務官吏には秘密の伝票帳簿を作成記入し、右官吏の検査に供すべき正規の帳簿に記入しないようなことをすれば、その行為は、物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項にいう「不正ノ行為ニヨリ物…