製造業者が物品税法第八条の申告をしたときは、税務官署は、国税徴収法第六条の規定により、納税人に対し、申告にかかる納金額および物品税法第一〇条所定の納期日すなわち第二種および第三種の物品にあつては毎月分を翌々月末日と指定して告知するものであり、右納期日に告知にかかる納金額だけを納め本来納入すべき税金額を納めなかつたときは、不納分の逋脱税は、右納期日の徒過により既遂となるものと解すべきである。
物品税逋脱罪の既遂時期
物品税法18条1項2号,物品税法8条,物品税法10条,国税徴収法6条
判旨
物品税の逋脱罪は、税務官署が指定した納期日を徒過し、本来納入すべき税金額を納めなかった時点で既遂に達する。
問題の所在(論点)
物品税法違反(逋脱罪)の実行の着手および既遂時期はいつか。特に、税務官署が指定した納期日の徒過が既遂の成否に直結するかが問題となる。
規範
製造業者が物品税法に基づく申告を行い、税務官署が国税徴収法の規定により納税告知を行った場合、当該告知に係る納期日(物品税法所定の期限)までに本来納入すべき税全額を納付しないときは、その納期日の徒過をもって逋脱罪は既遂になる。
重要事実
製造業者である被告人は、物品税法8条に基づき物品税の申告を行った。これに対し税務官署は、国税徴収法6条の規定に従い、被告人に対し申告に係る納金額および納期日(第2種・第3種の物品につき、毎月分を翌々月末日とする日)を指定して告知した。被告人は、当該納期日までに告知された納金額の一部のみを納付し、本来納入すべき税額の全額を納付しなかった。
あてはめ
本件において、税務官署は法令に基づき納金額と納期日(翌々月末日)を被告人に告知している。逋脱罪は適正な税徴収を妨げる犯罪であるところ、指定された納期日は納税義務を履行すべき最終的な期限を画するものである。したがって、この納期日が経過した時点で、本来納付すべき金額と実際に納付された金額との差額分について、税の徴収を免れたという実害が発生したと評価できる。告知された納期日を徒過した事実は、逋脱という結果を確定させる決定的な要素といえる。
結論
物品税の逋脱罪は、指定された納期日の徒過により既遂になる。本件被告人が納期日までに本来の税額を完納しなかった以上、逋脱罪が成立する。
実務上の射程
租税犯における既遂時期を判断する際の指標となる。申告納税方式や賦課課税方式の差異にかかわらず、法令上の納期限や税務当局が指定した期限の徒過が、逋脱罪の「既遂」を構成する重要なメルクマールになることを示している。答案上では、実行行為の終了時期や公訴時効の起算点を検討する場面で活用できる。
事件番号: 昭和35(あ)2904 / 裁判年月日: 昭和38年5月29日 / 結論: 棄却
所論昭和三四年二月乃至四月の各月に製造場より移出にかかる本件ピアノの物品税逋脱罪の既遂時期は、夫々翌々月末日の経過した時、即ち、同年五月一日、六月一日、七月一日である(昭和三一年(あ)第四七号同年一二月六日第一小法廷決定、集一〇巻一二号一五八三頁参照)。