賭博常習者というのは、賭博を反覆する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法一四条にいわゆる社会的身分と解することはできないから刑法一八六条の規定をもつて憲法一四条に違反するものであるとすることができない。
賭博常習者と憲法第一四条にいう「社会的身分」
刑法186条,憲法14条
判旨
刑法186条2項の賭場開張図利罪が懲役刑のみを法定刑としていることは、犯罪者の属性に基づく個別的な処置であり、憲法14条の法の下の平等に違反しない。また、賭博常習者は同条にいう「社会的身分」には該当しない。
問題の所在(論点)
刑法186条2項(賭場開張図利罪)が懲役刑のみを法定刑としていること、および常習性という犯罪者の属性に基づいて重い刑罰を科すことが、憲法14条1項の法の下の平等に反しないか。
規範
憲法14条は国民が不合理な差別を受けないことを規定するが、犯罪の処罰は特別予防及び一般予防の要請に基づき、各犯罪・犯人ごとに妥当な処置を講ずるものである。また、同条にいう「社会的身分」とは、人種、信条、性別等と並ぶ、本人の努力では変更できない後天的な属性を指し、犯罪を反復する習癖といった個人の属性としての「身分」はこれに含まれない。
重要事実
被告人は刑法186条2項の賭場開張図利罪に問われた。弁護人は、自転車競技法違反等の他の賭博関連罪と比較して、同条が懲役刑のみを法定刑として規定していることは、合理的な理由のない差別であり、憲法14条の法の下の平等に反すると主張して上告した。また、常習性は個人の属性(身分)による差別であるとも主張された。
あてはめ
まず、犯罪の処罰において各犯罪の性質や犯人の特性に応じて異なる刑を規定することは、刑事政策的な要請に基づくものであり、当然に許容される。次に、賭博常習者という性質は、賭博を反復する習癖という犯罪者の属性としての身分にすぎず、憲法14条が差別の禁止対象として列記する「社会的身分」には該当しない。したがって、他の法令(自転車競技法等)との法定刑の差異や、常習性を理由とする加重規定は、不合理な差別とはいえない。
結論
刑法186条2項の規定は憲法14条に違反しない。
実務上の射程
刑事罰の格差が平等原則に反するか否かの判断において、立法府の広範な裁量を認める基準として活用できる。特に「社会的身分」の意義について、犯罪的属性は含まれないとする限定解釈を示す際の根拠となる。
事件番号: 昭和53(あ)1860 / 裁判年月日: 昭和54年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法185条の賭博罪が、公認された公営競技等との対比において私人の賭博行為のみを処罰の対象とする点は、立法政策の問題に属し、憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が私的に賭博行為を行ったとして刑法185条に基づき起訴された。これに対し、弁護側は、国や公共団体が行う公営競技(公営ギャンブ…
事件番号: 昭和45(あ)1706 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法185条および186条2項が賭博行為を処罰することは、法の下の平等を定める憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が賭博場開張図利および賭博の罪に問われた事案において、弁護人は、これらの罪を処罰する規定は憲法14条(平等原則)に違反し無効である旨を主張して上告した。 第2 問題の所在…
事件番号: 昭和42(あ)1389 / 裁判年月日: 昭和43年4月23日 / 結論: 棄却
所論は、憲法第一四条違反を主張する。しかしながら、一般に賭博犯における刑の量定にあたつて、当該被告人がいわゆる博徒であるかどうかという点、博徒仲間においてどのような地位を占めているかという点は、いずれも当該犯行における犯意の強弱、加担の動機等の情状につながり、ひいては再犯のおそれの有無とも関連するところであつて、これら…