公職選挙法第一四二条所定の通常葉書ではない第一審判決認定の如き内容の本件新聞紙「A」号外(註。一九五八年四月三〇日付号外神奈川版)を頒布した所為は、同法第一四二条の法定外文書頒布禁止に違反する。
公職選挙法第一四二条の法定外文書に当る事例。
公職選挙法142条
判旨
公職選挙法148条2項による新聞紙等の頒布の自由は、同条1項の新聞紙等の販売を業とする者が通常の方法で頒布する場合に限り認められる。したがって、販売を業としない者が選挙運動のために法定外の文書を頒布する行為は、同法142条の法定外文書頒布禁止規定に違反する。
問題の所在(論点)
公職選挙法148条2項による新聞紙等の頒布の自由が認められるための主体的要件、および同条の要件を満たさない場合の142条(文書図画の頒布制限)との関係が問題となる。
規範
公職選挙法148条2項は、新聞紙または雑誌の販売を業とする者が、同条1項に規定された要件を満たす新聞紙等を、通常の方法で頒布する場合に限り、その頒布を許容するものである。この主体要件を満たさない者が、選挙運動のために同法142条所定の通常葉書等以外の文書を頒布する行為は、同条の法定外文書頒布禁止の対象となる。
重要事実
被告人は、選挙運動のために新聞紙「A」号外を頒布した。当該文書は、公職選挙法148条3項の要件(第三種郵便物の承認等)を具備している可能性があったものの、被告人自身は同条所定の新聞紙の販売を業とする者ではなかった。原審は、被告人が販売業者ではないことを理由に、当該頒布行為が同法142条に違反すると判断した。
あてはめ
本件において、被告人が新聞紙の販売を業とする者であるという事実は認められない。たとえ頒布された文書が内容面で公職選挙法148条3項の要件を具備していたとしても、主体要件(販売業者であること)を欠く以上、同条2項による頒布の許容は適用されない。その結果、通常葉書ではない当該文書を頒布した行為は、同法142条が禁じる法定外文書の頒布に該当すると評価される。
結論
被告人は販売を業とする者ではないため、公職選挙法148条2項の適用はなく、法定外文書を頒布した所為は同法142条に違反する。
実務上の射程
選挙運動における文書頒布の規制(公選法142条)と、新聞・雑誌の報道の自由(148条)の調整に関する判断。実務上、148条の特権を享受するためには、文書の形式的要件だけでなく「販売を業とする者」という主体要件を厳格に満たす必要があることを示す。憲法21条(表現の自由)の主張に対する反論の枠組みとしても機能する。
事件番号: 昭和39(あ)37 / 裁判年月日: 昭和39年6月16日 / 結論: 棄却
一 原判決の公職選挙法第一四二条第一項、第一四六条第一項にいわゆる頒布に対する判示解釈は正当である(昭和三五年(あ)第一五一一号同三六年三月三日第二小法廷判決、刑集第一五巻三号四七七頁参照)。 二 (原判示解釈の要旨)公職選挙法第一四六条第一項の頒布、同法第一四二条第一項の頒布とは多数人に配布することをいい、その多数人…