判旨
公職選挙法221条3項にいう「公職の候補者」とは、法律上の届出により候補者としての地位を有する者を指し、立候補届出前の「立候補しようとする特定人」は含まれない。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条3項にいう「公職の候補者」の意義。特に、正式な立候補届出前の「立候補しようとする特定人」が含まれるか否か。
規範
公職選挙法221条3項(買収罪等に関する加重処罰規定)に規定される「公職の候補者」とは、同法の規定に基づき、正式な立候補の届出または推薦の届出がなされることにより、候補者としての法律上の地位を有するに至った者をいう。したがって、未だ正式な届出をしていない「立候補しようとする特定人」は、同条項の「公職の候補者」には該当しない。
重要事実
被告人Aは、昭和34年4月30日施行の町議会議員選挙に際し、立候補の決意をしたものの、正式な立候補届出前の段階において、自己の当選を得る目的で有権者に対し饗応、供与、金員の交付等を行った。第一審及び原審は、被告人Aが「立候補しようとする特定人」であるとして、公職選挙法221条3項を適用して処罰したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件において、被告人Aが饗応等の行為を行ったのは「立候補届出前」であることが認められる。判例の解釈によれば、同法221条3項の適用対象は正式な届出を経た候補者に限定される。そのため、届出前の段階にある被告人Aを「公職の候補者」として同条3項により処断した原判決及び第一審判決には、法令の解釈適用の誤りがあるといえる。ただし、当該行為自体は同法221条1項(通常の買収罪等)の構成要件を充足するため、同項を適用して処断すべきである。
結論
被告人Aに公職選挙法221条3項を適用した部分は破棄される。被告人の行為は同法221条1項各号等に該当し、懲役3月(執行猶予2年)に処される。
実務上の射程
選挙犯罪における身分犯的要素の解釈を示す。221条3項の「候補者」は限定的に解釈される一方で、届出前の買収行為自体は同条1項(「何人も」を主体とする)により処罰可能である。答案上は、罪刑法定主義の観点から文言を厳格に解釈しつつ、実質的な処罰の可否は別項で検討するという論理構成の参考になる。
事件番号: 昭和35(あ)1432 / 裁判年月日: 昭和35年12月23日 / 結論: 破棄自判
公職選挙法第二二一条第三項にいう「公職の候補者」とは、同法の規定にもとづく正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至つた者をいうものと解すべきであり、今だ正式の届出をしない、いわゆる「立候補しようとする特定人」を包含しないものと解するを相当する。