判旨
報道のための取材活動であっても無制限ではなく、新聞記事の掲載を口実とした恐喝の手段として行われた場合には、刑法上の罪責を問うても憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
新聞記事の取材活動を名目として行われた恐喝行為について、刑罰を科すことが憲法21条の保障する取材の自由を侵害し違憲とならないか。また、かかる処罰が憲法22条に違反しないか。
規範
憲法21条が保障する報道のための取材活動の自由といえども、無制限のものではなく、公共の福祉や特定人の正当な利益を不当に害することは許されない。したがって、取材活動としての外形を備えていても、それが特定の犯罪行為の手段として行われた場合には、正当な業務の範囲を逸脱したものとして処罰の対象となる。
重要事実
日刊新聞の編集者である被告人が、新聞記事の掲載を口実として、相手方を畏怖困惑させる意図で取材・調査を行い、投資を受ける名目で金員を喝取したとして恐喝罪に問われた。被告人側は、かかる行為は取材活動の一環であり、処罰することは憲法21条(表現の自由)および22条(職業の自由)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件被告人の行為は、実態として新聞記事掲載に藉口(しゃこう)して相手方を畏怖困惑させる意図で行われた恐喝の手段であると認められる。このような恐喝行為は、特定人の正当な利益を不当に害するものであり、公共の福祉による制約の範囲内にある。また、本件は任意に投資を受けた事実ではなく、他から金員を喝取した事実が認定されているため、職業の自由を侵害するとの主張も前提を欠く。
結論
本件恐喝行為につき罪責を問うことは、憲法21条および22条1項に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
取材の自由が公共の福祉により制約を受けることを示した初期の重要判例。取材活動が犯罪の手段として悪用された場合の限界を明示しており、石井記者事件等と並んで報道の自由の質的限界を論じる際の基礎となる。答案上は、権利の保障範囲を認めた上で、公共の福祉による制約(他者の権利との調整)の具体例として引用できる。
事件番号: 昭和36(あ)1340 / 裁判年月日: 昭和38年9月17日 / 結論: 棄却
被告人および弁護人の各上告趣意中には、いずれも憲法第二一条第一項違反をいう部分があるが、憲法第二一条第一項の保障する表現の自由といえども国民の恣意のままに許されるものでなく、つねに公共の福祉によつて調整されなければならないことおよび言論、出版による脅迫が公共の福祉を害し、表現の自由の限界を逸脱するものであることは、当裁…
事件番号: 昭和32(あ)2119 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】恐喝罪の成否において、記事の掲載が専ら公益を図る目的であり、かつ内容が真実であると誤信していたとしても、害悪の告知による財物交付の要求が認められる限り、直ちに違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の記事を新聞等に掲載することを背景に、相手方に対して何らかの要求…