判旨
恐喝罪の成否において、記事の掲載が専ら公益を図る目的であり、かつ内容が真実であると誤信していたとしても、害悪の告知による財物交付の要求が認められる限り、直ちに違法性が阻却されるものではない。
問題の所在(論点)
刑法230条の2(名誉毀損罪の特例)に準ずるような公益目的や真実性の誤信がある場合、恐喝罪における「害悪の告知」としての違法性が阻却されるか。
規範
恐喝罪(刑法249条)における違法性阻却の判断にあたっては、行為の目的が公益を図るものであり、かつ摘示内容が真実であると誤信していたとしても、手段としての害悪の告知が社会通念上許容される範囲を超えている場合には、違法性を阻却しない。
重要事実
被告人AおよびBは、特定の記事を新聞等に掲載することを背景に、相手方に対して何らかの要求を行った。被告人側は、当該記事の掲載は専ら公益を図る目的(公共の利害に関する事実に係る公益目的)に基づくものであり、かつその内容が真実であると信じていたと主張して、恐喝罪の成立を争った。
あてはめ
本件において、たとえ記事の掲載が専ら公益を図る目的であり、内容を真実と信じていたとしても、それを手段として相手方を畏怖させ財物を交付させようとする行為は、名誉毀損罪における正当化事由の枠組み(真実性の証明等)とは別個に評価される。害悪の告知を伴う財物交付要求という行為態様が認められる以上、主観的な公益目的や誤信のみをもって恐喝罪の成立が妨げられるものではないと解される。
結論
公益目的や真実性の誤信があったとしても、恐喝罪の成立は妨げられず、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
権利行使や公益目的を隠れ蓑にした恐喝行為に対し、名誉毀損罪の阻却事由(230条の2)を単純に類推適用できないことを示す。権利行使と恐喝の限界が問題となる場面で、手段の相当性を欠く場合の違法性認定の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1846 / 裁判年月日: 昭和28年8月26日 / 結論: 棄却
本件は被告人が新聞「A」に記事を掲載した事実を処罰の対象としているものではなく、記事の掲載を種に金員を喝取した恐喝の事実を処罰の対象としたものである。そして記事の掲載を種に金員を喝取する場合に右掲載を種とすることが恐喝罪が成立するためのいわゆる害悪の通告に当ることは言を要しないところである。それゆえ所論違憲(言論、出版…