一 判例違反を主張する所論引用の大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日大審院判決は、当裁判所の判例によりすでに変更されたものである(昭和二七年(あ)第六五九六号同三〇年一〇月一四日第二小法廷判決、刑集九巻一一号二一七三頁・昭和三一年(あ)第四六九号同三三年五月六日第三小法廷判決、刑集一二巻七号一三三六頁参照)。 二 (所論引用の大審院判決の要旨)正当な権利者が欺罔または恐喝の手段を用いて、義務者から正数以外の財物または正数以上の利益を取得した場合、詐欺恐喝の罪は、右権利の範囲外において領得した財産または利益の部分につき成立する。
権利行使と恐喝罪成否に関する判例変更の有無。
刑訴法405条,刑法249条
判旨
正当な権利行使の手段として行われた行為であっても、その手段が社会通念上許容される範囲を超え、相手方を畏怖させるに足りるものであれば、恐喝罪が成立する。
問題の所在(論点)
正当な権利を有する者が、その権利を実現するために脅迫的な手段を用いた場合、恐喝罪が成立するか。権利行使の正当性と恐喝罪の成否の関係が問題となる。
規範
債権の取立て等の正当な権利行使の文脈であっても、その手段が暴行又は脅迫を伴うものであり、かつ、その手段が目的との関係で社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している場合には、恐喝罪(刑法249条)の構成要件に該当し、違法性が阻却されない。
重要事実
本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明であるが、被告人が債権回収等の権利行使に関連して脅迫的言動を用いたことが示唆されている。弁護人は、正当な権利行使の範囲内であるとして恐喝罪の不成立を主張した(大正2年大審院判決の引用による)。
あてはめ
判決文によれば、所論引用の大正2年判決(権利行使であれば恐喝罪にならないとする趣旨)は既に判例変更されている。正当な権利があっても、相手方を畏怖させる手段を用いれば恐喝罪の成否を妨げない。本件においても、従前の最高裁判例(昭和30年、昭和33年判決)の基準に照らし、権利行使の枠内であるとの主張は排斥され、原判決の恐喝罪の認定は維持されるべきである。
結論
正当な権利行使であっても、手段が社会通念上不相当であれば恐喝罪が成立する。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
権利行使と恐喝・強盗の限界に関するリーディングケース。答案では、1.不法領得の意思の有無(権利の範囲内か)、2.手段の相当性(社会通念上の許容限度)の二段階で検討する。本判決は手段の不相当性により恐喝罪を認める実務を確立したものである。
事件番号: 昭和42(あ)2324 / 裁判年月日: 昭和43年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使の手段として行われた恐喝行為について、その手段が社会通念上許容される範囲を超える場合には、恐喝罪が成立すると解すべきである。また、最高裁判所の意見が大審院の判例に反する場合であっても、既に最高裁判所の判例によって変更されているときは、小法廷で裁判をすることができる。 第1 事案の概要:被告…