判旨
権利行使の手段として行われた恐喝行為について、その手段が社会通念上許容される範囲を超える場合には、恐喝罪が成立すると解すべきである。また、最高裁判所の意見が大審院の判例に反する場合であっても、既に最高裁判所の判例によって変更されているときは、小法廷で裁判をすることができる。
問題の所在(論点)
権利行使の手段として行われた恐喝行為の違法性、および大審院判例と異なる判断を小法廷で行うことの可否が問題となる。
規範
権利行使の目的がある場合であっても、その手段が社会通念上許容される範囲を逸脱する暴行・脅迫を伴うものであれば、刑法249条の恐喝罪が成立する。また、訴訟手続上、既に最高裁判所が判例により大審院の判例を変更している場合、再度の判例変更は不要であり、小法廷での判断が可能である。
重要事実
被告人が恐喝罪に問われた事案において、弁護人は「権利行使の一環である」として、大審院の旧判例(権利行使であれば恐喝罪を否定する趣旨のもの)を引用し、判例違反を主張して上告した。しかし、当該大審院判例が示した法理は、既に昭和27年以降の最高裁判例によって実質的に変更されていた。
あてはめ
本件において、弁護人が引用した大審院判例は、恐喝罪に関する限り、既に最高裁判所の複数の大法廷・小法廷判決によって変更されている。したがって、当該旧判例は刑事訴訟法405条にいう「判例」には当たらず、これと異なる判断を維持しても判例違反の違法はない。また、最高裁判所裁判事務処理規則9条6項に基づき、既に変更済みの判例に反する意見を述べるに過ぎない場合は、小法廷で裁判を行うことが適法である。
結論
本件上告を棄却する。権利行使であっても手段が不当であれば恐喝罪は成立し、本件の判断に判例違反の違法はない。
実務上の射程
権利行使と恐喝罪の限界に関する答案において、「社会通念上の許容範囲」を基準とする現行判例法理を再確認する際に引用される。また、小法廷による判例変更の限界(既変更判例の処理)という手続的側面でも参照し得る。
事件番号: 昭和46(あ)215 / 裁判年月日: 昭和46年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権利行使であっても、その方法が社会通念上一般に認容すべき程度を逸脱する場合には恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、Aとともに手形の取立てを行うに際し、何らかの脅迫的手段を用いた。被告人側はこれが正当な権利行使であることを主張したが、原審はその取立手段の態様が社会通念上の許容範囲を…