原判決が昭和二五年(れ)第一二六〇号同二六年九月二八日第二小法定判決(集五巻一〇号二一二七頁)と相反する判断をしていることは所論指摘のとおりであるが、右判例に従えば、原判決の是認した第一審判決の適用している刑法第二四九条第一項の未遂の罪よりも重い同条第二項の既遂の罪によつて処断しなければならなくなり、被告人に不利益な結果を来すことになるから、所論判例違反の主張は、被告人に不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
被告人に対し不利益な判例違反の主張として適法な上告理由にあたらないとされた事例
刑訴法402条,刑訴法405条2号,刑法249条
判旨
判例違反を理由とする上告は、それが認められることにより被告人に不利益な結果をもたらす場合には、被告人の利益を保護する上告制度の趣旨に反するため、上告理由として許されない。
問題の所在(論点)
被告人の不利益になる判例違反の主張が、刑訴法405条2号の上告理由として適法か。
規範
判例違反の上告理由(刑訴法405条2号)は、被告人の利益を保護するために認められるものである。したがって、当該判例違反を肯定することによって、原判決よりも重い罪に問われるなど、被告人に不利益な結果を来すこととなる主張は、上告理由として許されない。
重要事実
第一審判決は、被告人の行為について刑法249条1項の恐喝未遂罪を適用し、原判決もこれを是認した。これに対し弁護人は、原判決が従前の最高裁判例(昭和26年判決)と相反する判断をしているとして上告を申し立てた。しかし、仮に当該判例に従った場合、被告人の行為は1項の未遂罪よりも重い同条2項の恐喝既遂罪に該当することになる状況であった。
あてはめ
弁護人が指摘する判例(昭和26年判決)を本件に適用すれば、原判決が認定した恐喝未遂罪(刑法249条1項)よりも重い刑を規定する恐喝既遂罪(同条2項)による処断が必要となる。このような判例違反の主張は、認められたとしても結果として被告人に不利益な結果を来す。上告制度は被告人の救済を目的とするものであるから、被告人側から自己に不利益な法的判断を求めることは、同制度の本旨に照らして許容されないと解される。
結論
被告人に不利益な結果を来す判例違反の主張は、上告理由として認められない。
実務上の射程
本判決は「被告人側からの不利益な上告の禁止」を明確にしたものである。答案上は、上告理由の適格性を論じる際、単に判例との齟齬があるかだけでなく、その主張が認められることで被告人がより有利な立場に置かれる必要がある(上告の利益)という文脈で使用する。特に罪名や既遂未遂の評価が争点となる場合に留意すべき射程である。
事件番号: 昭和25(あ)706 / 裁判年月日: 昭和26年3月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に当たらないこと、および同法411条を適用すべき事由が認められないことを理由に、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てたが、その趣旨は刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないものであった。また、裁判所が記録を精査した結果、職権破棄事…
事件番号: 昭和27(あ)5210 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張・判断されていない第一審の訴訟手続違背を上告理由とすることはできず、また、事実誤認を前提とした憲法違反の主張や単なる量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の判決に対し控訴したが、控訴審判決後、上告審において新たに第一審の訴訟手続に違反がある旨を主…