権利行使と恐喝罪成否に関する大審院判例の変更
刑法249条
判旨
不法領得の意思の定義に関し、一時的使用であっても物の経済的用法に従いその効用を享受する意思がある場合には、同意思が認められるとした従前の判例を維持したものである。
問題の所在(論点)
窃盗罪(刑法235条)の成立要件である「不法領得の意思」に関し、一時的使用の目的で他人の物を占有した場合に、権利者を排除して自己の所有物として振る舞う意思(権利者排除意思)および利用処分意思が認められるか。
規範
窃盗罪における不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用または処分する意思をいう。一時的な使用目的であっても、その目的が物の効用を著しく喪失させるものであるか、あるいは相当期間にわたり占有を継続するものである場合には、権利者排除意思および利用処分意思が認められる。
重要事実
本件の具体的な事実関係は、提示された判決文本文からは不明であるが、弁護人が大正12年の大審院判決(一時的使用について不法領得の意思を否定したもの)を引用して判例違反を主張した事案である。原判決が、被告人の行為について窃盗罪の成立を認めたのに対し、上告人が不法領得の意思の欠如を理由に上告した。
あてはめ
判決文によれば、所論が引用する「一時的使用に不法領得の意思を否定する大審院判決」は、すでに昭和30年および昭和33年の最高裁判決によって変更されている。したがって、本件においても、単なる一時的な使用であっても、物の経済的用法に従いその効用を享受する意思が認められる限り、不法領得の意思の存在を肯定した原審の判断は正当であると解される(具体的な事実は不明だが、判例変更の法理を維持したものである)。
結論
不法領得の意思を肯定した原判決に判例違反はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
使用窃盗と窃盗罪の区別に関する標準的な判断枠組みを維持する。答案上は、一時的使用であっても「権利者排除意思(可罰的評価に値する占有奪取)」と「利用処分意思(価値享受の意思)」の二要素を検討し、特に対象物の価値減耗が激しい場合や使用時間が長時間に及ぶ場合に、本判決が維持した規範を用いて不法領得の意思を肯定する根拠とする。
事件番号: 昭和57(あ)1193 / 裁判年月日: 昭和62年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件決定は、上告理由として主張された憲法違反、判例違反、事実誤認等の主張がいずれも適法な上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、第一審または控訴審の判決を不服として上告した事案。弁護人は、憲法21条・31条違反、過去の最高裁判例(昭和30年…