判旨
権利行使の一環として行われた行為であっても、被告人が交付を受けるべき権利があると確信していたとは認められない場合には、恐喝罪等の不法領得の意思が否定されることはない。
問題の所在(論点)
権利行使と恐喝罪の成否に関し、被告人が権利があると確信していない場合に不法領得の意思が肯定されるか。
規範
債権等の権利を行使する目的で暴行・脅迫等の手段を用いた場合、その手段が社会通念上容認される限度を超えない限りにおいて違法性が阻害され得る。しかし、客観的な権利の存在に加えて、行為者にその交付を受け得るべき権利があるとの確信(正当な権利行使の認識)が必要であり、これがない場合には不法領得の意思が認められる。
重要事実
被告人らが、相手方に対して何らかの交付を求める行為に及んだ際、その行為が「権利の実行」であると主張して争った事案。原審は、被告人らがその交付を受け得べき権利があると確信していたものではないことを事実として認定した。
あてはめ
本件において、被告人らは交付を受け得べき権利があると確信していた事実は認められない。したがって、権利行使の体裁を採っていたとしても、主観的な正当性を欠く以上、権利の実行としての性質を具備せず、不法領得の意思に基づく行為と評価される。
結論
被告人らの行為について、権利の実行であるとの主張は前提を欠き、犯罪の成立を妨げない。上告棄却。
実務上の射程
権利行使を口実とした恐喝罪等の事案において、主観的要件(権利の確信)の欠如を理由に違法性阻却や不法領得の意思の否定を封じる論理として機能する。もっとも、本判決自体は簡潔な決定であるため、具体的な許容限度の枠組みについては後掲の昭和30年10月14日判決等の精緻な規範を参照すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4133 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の実行手段として恐喝行為が行われた場合であっても、それが権利の実行手段として認定されない限り、違法性が阻却される余地はない。 第1 事案の概要:上告人は、他に2名と共謀した上で、被害者Aに対し「女関係」について詰問し、判示の言辞(具体的な言辞は判決文からは不明)を用いて脅迫的言動を行った。弁護…