判旨
表現行為を伴う活動であっても、多衆の威力を示して相手方を畏怖させるに足りる脅迫行為の一部を成す場合には、刑法上の恐喝罪における脅迫にあたり、憲法21条1項によっても正当化されない。
問題の所在(論点)
多衆の威力を背景とした恐喝行為の手段として行われた表現行為について、憲法21条1項の表現の自由の保障を理由に、恐喝罪(刑法249条)の構成要件該当性または違法性が否定されるか。
規範
憲法21条1項が保障する表現の自由といえども、公共の福祉による制約を受ける。多衆の威力を示して相手方を畏怖せしめるに足りる脅迫行為は、その一部に表現行為が含まれていたとしても、全体として観察すれば恐喝罪(刑法249条1項)の手段たる「脅迫」に該当し、違法な侵害行為として許容されない。
重要事実
被告人らは、多衆の威力を背景に、相手方に対して畏怖させるに足りる言辞や行動を用いた。この一連の行為の中には、言論や表現としての性質を持つ行為が含まれていた。被告人側は、これらの表現行為が憲法21条1項により保障されるべきであり、恐喝罪の手段としての違法性を欠くと主張して上告した。
あてはめ
本件における所論の表現行為は、単独で独立したものではなく、事実審が恐喝の手段として認定した一連の行為の一部を構成するに過ぎない。この一連の行為を個別に分断することなく「全体として観察」すれば、多衆の威力を示して相手方を畏怖させるに足りる「脅迫」にあたると評価できる。したがって、当該行為は公共の福祉による制約を受けるべき範囲に含まれ、表現の自由の保障を逸脱した違法な恐喝手段であるといえる。
結論
表現行為を伴うものであっても、多衆の威力を背景とした恐喝手段の一部を成す場合は、憲法21条1項に違反せず、恐喝罪が成立する。
実務上の射程
集団的示威運動や労働争議等の文脈で表現行為が犯罪構成要件(特に脅迫や強要)に該当する場合の限界を示す。行為の一部に表現の側面があっても、行為全体を客観的に観察し、相手方の意思の自由を抑圧する態様であれば、表現の自由による免責は認められないという判断枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和41(あ)2301 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権利行使の手段として行われた恐喝行為であっても、その手段方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱する場合には、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:上告人は正当な権利(債権等)を有していたが、その行使に際して恐喝罪の構成要件に該当する行為を行った。弁護人は権利行使である以上…