被告人および弁護人の各上告趣意中には、いずれも憲法第二一条第一項違反をいう部分があるが、憲法第二一条第一項の保障する表現の自由といえども国民の恣意のままに許されるものでなく、つねに公共の福祉によつて調整されなければならないことおよび言論、出版による脅迫が公共の福祉を害し、表現の自由の限界を逸脱するものであることは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一三〇八号同二四年五月一八日大法廷判決、刑集三巻六号八三九頁、昭和三一年(あ)第三一四号同三三年四月二二日第三小法廷判決、刑集一二巻六号一一一八頁)により明らかであつて、その趣旨に徴し、雑誌記事掲載をもつて人を脅迫し、金員を喝取した行為を刑法第二四九条により処罰することは、なんら憲法の右条項に違反するものでないから、右違憲の主張は理由がない。
雑誌記事掲載をもつて人を脅迫し、金員を喝取した行為を刑法第二四九条により処罰することと憲法第二一条第一項。
憲法21条1項,刑法249条
判旨
憲法21条1項の表現の自由は絶対無制限ではなく、公共の福祉による調整を受ける。雑誌記事掲載をもって人を脅迫し金員を喝取する行為は表現の自由の限界を逸脱しており、刑法249条による処罰は合憲である。
問題の所在(論点)
雑誌記事の掲載という表現行為の形式を伴う恐喝行為(刑法249条)を処罰することが、憲法21条1項に違反しないか。
規範
表現の自由といえども無制限に許されるものではなく、つねに公共の福祉によって調整されなければならない。言論や出版による形式をとっていたとしても、それが実質的に人を脅迫するものであれば、公共の福祉を害するものとして表現の自由の限界を逸脱する。
重要事実
被告人は、自身が関与する雑誌への記事掲載を背景として、対象者を脅迫し、これにより金員を喝取した。被告人側は、このような雑誌記事掲載に関連する行為を刑法上の恐喝罪として処罰することは、憲法21条1項が保障する表現の自由を侵害するものであると主張して上告した。
あてはめ
本件における雑誌記事掲載を手段とした金員喝取行為は、その態様において「脅迫」に該当するものである。このような言論・出版による脅迫は、他者の権利を不当に侵害するものであって、公共の福祉を著しく害するといえる。したがって、たとえ表現行為の側面を有していたとしても、その実質は犯罪行為であり、表現の自由の正当な限界を逸脱していると解される。
結論
雑誌記事掲載をもって人を脅迫し金員を喝取した行為を恐喝罪として処罰することは、憲法21条1項に違反しない。
実務上の射程
表現の自由が「公共の福祉」による制約を受けることを示した初期の判例の一つ。取材や報道の形を借りた恐喝・脅迫行為について、形式的な「表現」であることを理由に免責されないことを明確にしており、刑法と憲法の交錯領域における限界事例の判断指針となる。
事件番号: 昭和34(あ)914 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】報道のための取材活動であっても無制限ではなく、新聞記事の掲載を口実とした恐喝の手段として行われた場合には、刑法上の罪責を問うても憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:日刊新聞の編集者である被告人が、新聞記事の掲載を口実として、相手方を畏怖困惑させる意図で取材・調査を行い、投資を受ける名目で金…