外国人は不法に本邦に入つた者といえども、外国人登録法第三条第一項所定の登録申請義務があり、不法入国者に登録申請義務を課したからといつて自己の不法入国の罪を供述するのと同一の結果を来すものということができないこと及び不法入国の罪によつて処罰される危険において登録することを期待できないとする見解が登録の本質を誤解する失当のものであることは、昭和二九年(あ)二七七七号、昭和三一年一二月二六日大法廷判決(判例集一〇巻一二号一七六九頁)の趣旨に徴し明らかである。
不法入国の外国人と外国人登録法第三条第一項による登録申請義務。
外国人登録法3条1項,憲法38条1項
判旨
不法入国した外国人であっても外国人登録法上の登録申請義務を負い、当該義務を課すことは自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に反せず、期待可能性も否定されない。
問題の所在(論点)
1. 不法入国者に外国人登録申請義務を課すことは、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)に違反するか。2. 不法入国の罪による処罰の危険がある場合、登録申請の期待可能性が否定されるか。
規範
外国人登録法に基づく登録申請義務は、居住関係等の実態を把握するための行政上の措置であり、不法入国という犯罪事実の供述を強制するものとは評価されない。また、処罰の危険を理由に登録申請の期待可能性を否定することは、登録制度の本質を誤解するものであり許されない。
重要事実
不法に入国した外国人が、外国人登録法3条1項に基づき入国後一定期間内に居住地の市区町村長に対して行うべき登録申請を怠ったとして、同法違反の罪に問われた。被告人は、不法入国者である自身に登録を義務付けることは、自己の犯罪を露呈させるものであり憲法違反であること、及び期待可能性がないことを主張して争った。
あてはめ
外国人登録申請は居住の事実等を届け出るものであり、形式的に不法入国の罪を自白させるものではない。したがって、不法入国者に登録申請を求めても「自己に不利益な供述を強要」したものとはいえない。また、刑事処罰を免れるために行政上の義務を免除することは法の予定するところではなく、適法行為に出ることを期待できない特別の事情があるとは認められない。
結論
不法入国者にも登録申請義務は認められ、これに違反した者を処罰することは憲法38条1項に違反せず、刑事責任を否定する事情にもならない。
実務上の射程
行政上の届出義務と自己負罪拒否特権の関係を示す重要判例である。行政目的の調査や届出が、結果として刑事訴追の端緒となり得る場合であっても、直ちに憲法38条1項違反とはならないとする判断枠組みは、所得税の確定申告や交通事故の報告義務(憲法判例)等にも共通する論理である。
事件番号: 昭和53(あ)1587 / 裁判年月日: 昭和54年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国人登録法3条1項の新規登録申請義務は不法入国した外国人にも適用され、この義務の課受は自己に不利益な供述を強いるものではなく、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:不法に日本に入国した外国人が、外国人登録法3条1項に基づく新規登録の申請を行わなかった。これに対し、同法違反の罪が問われた…
事件番号: 昭和42(あ)2380 / 裁判年月日: 昭和43年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法入国した外国人に対し外国人登録法上の登録申請義務を課すことは、自己の不法入国の罪を供述させるのと同一の結果を招くものとはいえず、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、不法に日本に入国した外国人であった。外国人登録法3条1項は、本邦に在留する外国人に対し、新規の登録申請義務を…