一 原判決がその認定した事実関係の下において、本件強姦行為と致傷との間に因果関係あるものと判断したのは正当と認める。 二 (註。原判決の要旨)甲女は被告人から強姦されかかつたので、その難を避けるため、窮余気転を利かし、その際に被告人の手を逃れ、更に八畳の間を経て、二階屋根に出て、同所より二米七〇糎位下の地上に飛下り救を求めた。そのため同女は右地上降下の衝撃により治療一ケ月を要する腰椎打撲の障害を負うたものである。所論のように、たとえ同女が誤つて屋根から落ちたとしても、被告人の本件強姦(未遂)の所為と同女の右受傷との間には因果関係の存すること論をまたない。
強姦(未遂)行為と致傷との間に因果関係ありとした事例。
刑法181条
判旨
強姦行為に伴う致傷の結果について、実行行為と結果との間に因果関係を認めることができる。
問題の所在(論点)
強姦の実行行為と、その際に発生した致傷の結果との間に刑法上の因果関係が認められるか。
規範
実行行為と結果との間に因果関係が認められるためには、当該行為から当該結果が発生することが経験則上相当であるといえることを要する。特に強姦致死傷罪においては、強姦の実行行為に付随する暴行・脅迫やその過程で生じ得る負傷について、一連の行為の流れの中で結果が発生していれば因果関係を肯定し得る。
重要事実
被告人が被害者に対して強姦行為に及んだ際、その一連の過程において被害者に傷害を負わせた(詳細は判決文からは不明だが、原判決が認定した事実関係に基づけば、強姦行為と致傷の結果との間に事実上のつながりがあったとされる)。
あてはめ
原判決が認定した具体的な事実関係の下では、本件強姦行為と被害者が負った致傷との間には、強姦という実行行為に伴って通常生じ得る、あるいはその行為に誘発された結果としての関連性が認められる。したがって、当該行為と結果との間には因果関係があるものと判断するのが正当である。
結論
本件強姦行為と致傷との間には因果関係が認められ、強姦致傷罪が成立する。
実務上の射程
本決定は、強姦致傷罪(現行法の強制性交等致死傷罪等)における因果関係の判断において、実行行為と結果の間の時間的・場所的近接性や行為の態様を重視する実務上の運用を支持するものである。答案上は、強姦の手段たる暴行・脅迫のみならず、その一連の機会に生じた結果について、本判例を根拠に因果関係を肯定する論理構成が可能となる。
事件番号: 昭和31(あ)2294 / 裁判年月日: 昭和34年7月7日 / 結論: 棄却
強姦に際し婦女に傷害の結果を与えれば、姦淫が未遂であつても強姦致傷罪の既遂となり、強姦致傷罪の未遂という観念を容れることはできない。従つて中止未遂の問題も生じ得ないわけである。(昭和二四年(れ)第九三三号、同年七月一二日第三小法廷判決、判例集三巻八号一二三七頁参照)