判旨
共謀共同正犯の成立には自ら実行の任に当たることは不要であり、また共犯者の供述は被告人自身の自白(憲法38条3項)には含まれず、補強証拠なしに有罪認定の証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
1. 実行行為を分担していない共謀者に刑法60条の共同正犯が成立するか。 2. 共犯者の供述は、憲法38条3項にいう「本人の自白」に含まれ、補強証拠が必要となるか。
規範
1. 刑法60条の共同正犯は、数人が共謀の上で犯罪を実行した場合には、共謀者の一部が自ら実行行為に携わっていない場合であっても成立する。 2. 憲法38条3項にいう「本人の自白」とは被告人自身の供述を指し、共同審理の有無を問わず共犯者の供述はこれに含まれない。したがって、共犯者の供述は独立した証明力を有し、補強証拠を必要としない。
重要事実
被告人らは、多数で駐車場に侵入し、自動車に対して石や火炎瓶を投げて破壊することを協議決定(共謀)した。この計画に基づき実際の破壊行為が行われたが、被告人の中には自ら破壊行為(実行の任)に当たっていない者が含まれていた。また、裁判所が被告人IおよびJの有罪を認定する際、共犯者の供述調書を主な証拠として用いたことから、被告人側が共謀共同正犯の成否および自白の補強法則違反を理由に上告した。
あてはめ
1. 被告人Bらは、他数名と多数共同して駐車場に侵入し、自動車を破壊することを「協議決定」しており、この共謀に基づいて犯罪が実行された。たとえ自ら投石等の実行行為を行っていなくとも、この共謀に基づく実行がある以上、共同正犯の責任を免れない。 2. 被告人I、Jの有罪認定に用いられた証拠は「共犯者の供述調書」である。共犯者は、被告人本人との関係では「被告人以外の者」に該当する。したがって、その供述は「本人の自白」には当たらないため、独立して有罪認定の証拠となり得る。
結論
1. 共謀加担者が実行行為を分担せずとも共同正犯は成立する。 2. 共犯者の供述のみで被告人を本人を記録に照らして有罪と認定しても、憲法38条3項には違反しない。
事件番号: 昭和28(あ)3734 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述は互いに補強証拠となり得るとともに、共同被告人であっても弁論を分離した上で証人としてなされた供述は、完全な証拠能力を有する。 第1 事案の概要:被告人Aら複数名が共同正犯として起訴された事案において、第一審判決は、共同被告人の供述や弁論分離後の証人尋問における供述、その他の証拠を総合し…
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件(共謀・共謀に基づく実行)を肯定した重要判例である。また、自白の補強法則(刑訴法319条2項)の適用範囲において、共犯者の自白は「被告人の自白」に含まれず、補強証拠として利用可能であるだけでなく、それ自体で有罪認定が可能であるという結論を導く際に必須の射程を持つ。
事件番号: 昭和54(あ)1428 / 裁判年月日: 昭和55年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書において犯行に至る経緯として記載された事実は、特段の事情がない限り余罪として認定されたものとは解されず、また共謀成立前の一過程における心的状態の指摘は、共謀の内容そのものとは区別される。 第1 事案の概要:被告人らが共謀の上で犯罪行為に及んだとされる事案において、第一審判決が犯行に至るまでの…
事件番号: 昭和29(あ)1056 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: 棄却
一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない 二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しな…